MMカートリッジの負荷について考えてみよう
MMカートリッジは一般に47kΩの負荷抵抗で受けることは皆さんご存知だと思います。高級なものですと更に負荷容量を可変できるものもあります。カートリッジによっては最適な負荷容量を指定しているものもあります。
そこでMMカートリッジの最適な負荷抵抗・容量の考え方について解説します。
MMカートリッジの等価回路
カートリッジの回路は左図の様に表すことができます。
MMカートリッジはコイルの抵抗分RcとインダクタンスLcとがあり、更に接続されたイコライザアンプ入力団で47kΩの負荷抵抗に接続されています。入力段のコンデンサ容量は、シールド線の浮遊容量、初段FETの入力容量、入力段に接続されいてるコンデンサ容量の総和になります。
一般的にカートリッジの抵抗とインダクタンスはそれぞれ1kΩと500mHくらいです。500mHというのは非常に大きな値でスピーカーのウーハーに使用されるコイルの数十倍の大きさです。ですので入力段の数百pFという小さな容量成分だけで、LCRの共振を可聴帯域内に作ります。
周波数特性を計算する
さて等価回路がわかったところで、この回路の周波数特性を計算してみましょう。
左はspiceで計算した周波数特性です。この計算では電気回路のシミュレーションだけで、カートリッジの振動系の特性は一切考慮されていません。
0pFではLR回路になりますので、なだらかに高域が減少し、200pFではほぼフラットになり、それよりも容量が大きくなると10kHz付近にピークを作るようになります。
カートリッジメーカーが200pF付近の負荷容量を推奨しているのはこのためだと思います。
MMカートリッジ負荷の問題点
ただこのMMカートリッジの負荷特性は2つの問題があると考えています。
1. 200pFは平坦に見えるがピーキングでフラットにしている
200pF付近は確かに特性が平坦に見えるのですが、本来0pFの特性にLCRのピークを作って平坦にしているに過ぎないからです。これはAMラジオを正確に同調すると高域が落ちるので、少し同調をずらして高域を聞きやすくしたような状態と同じで、確かに聞こえはしてもその質は良くないからです。
2.実は200pFではない
イコライザアンプの高級機にはコンデンサ容量を選べるものがあります。普通に考えるとフロントパネルで200pFに合わせればいいか思いますが、実はそれでは容量オーバーです。
何故かと言うと、プレーヤーとイコライザアンプをつなぐシールド線が100pF近くあるからです。それに加えて初段のFETは10-200pF位の入力容量があります。MC用も兼用のイコライザアンプでは高GmのFETを使用しますが、この種のFETは50-100pF程度の入力容量があります。イコライザアンプによりますが100-200pFの容量が既に存在しているので、200pFも加えたら完全に容量オーバーです。
まとめると
MMカートリッジの場合200pFに合わせること自体が難しいのと、仮に全てを考慮してうまく合わせたとしてもピーキングしているので、結局音質的には今一つという結果になり易いということです。
DCEQ-1000で一つの解を提供しています
こういった問題を解消するために、新製品のDCEQ-1000ではキャパシタンスをキャせんセルして、使用状態で0pFを実現する機能を搭載しました。
また、実際の周波数特性で確認するために、周波数特性の測定機能も搭載しました。
0pFでいいの?
0pFでは高域がおちるのでは?という心配をする方がいらっしゃるかもしれません。
でも実は心配ないのです。それはカートリッジの振動系の特性が影響しているからです。