当社の製品でラインセレクターHAS-3Lという製品がありますが、これは文字通りCDプレーヤーなどのアナログ信号(RCAピンケーブル)を切り替えたりするためのものです。
入力切替の他、出力切り替え用としても使用することができます。よく頂戴する質問に同軸のデジタル信号の切り替えに使用できますか?というものがあります。実はお客様の方で既に試されていて192KHzでも問題ありませんでしたという報告はいただいていました。質問にもその様に答えていたのですが、実際に信号波形を調べてみました。
最初にお断りしておきますがCDなどの44.1KHzのデジタル信号はその(01が交互に来るとすると)64倍の2.8224MHzの矩形波になります。矩形波は1,3,5倍の・・・高調波から形成されているのでその10倍の帯域が必要とすると30MHzまで必要になります。96KHzの音源だと5.6448MHzの矩形波で60MHzの帯域、192KHzだと11.2896MHzの矩形波で120MHzは必要になります。
こうなるともう高周波の領域なので、だからケーブルは75Ωにしましょうとか、BNCはコネクターでないといけませんとか話がややっこしくなるわけです。
測定系はこの様になっています。
PC(USB)->hiFace(SPDIF)->(デジタルRCAケーブル75Ω用)->75Ω終端->1:10プローブ->デジタルオシロ
SPDIF信号を出力するのはXMOSというデバイスを搭載した非同期式のオーディオインターフェースです。
それでは まずhiFace出力を75Ωで終端して測定した出力波形を紹介します。
44.1KHzSPDIF信号
96KHzSPDIF信号
192KHzSPDIF信号
96KHzまではなんとか矩形波を保っていたのですが、192KHzになるともうぎりぎり信号が出ていますって状態になっています。
次に1.5mのデジタルケーブルを接続しその終端(75Ω)で測定した結果がこちらです。
1.5mデジタルケーブル接続後の96KHz・SPDIF信号波形
ほぼ原形が保たれています。ほとんど劣化はありません。ついでに普通のアナログ信号用のRCAケーブルで接続してみると、
1.5mアナログケーブル接続後の96KHz・SPDIF信号波形
意外とイケテマス。微かに角が丸くなっていますがほぼ現信号通りです。
そしてラインセレクター(HAS-3L)を接続してそのRCA出力端子で測定した波形がこちらです。
1.5mアナログケーブル接続+ラインセレクター挿入後の96KHz・SPDIF信号波形
こちらもほとんど変化はありません。微かに丸くなっていますが信号波形の品質は十分に保たれています。192KHzの場合も同じ様な感じでした。
というわけで結論として当社のラインセレクターをデジタル信号の切り替えに使用しても問題ないと考えられます(ただいかなるデジタル信号の切り替えについても動作を保証するというわけではありませんが)。
SPDIF信号をもっとよく見てみると結構凄いことになっています。
先ほどのhiFaceの出力波形をアナログオシロで見てみたのがこちらです。
hiFaceの192KHz出力波形(アナログオシロ)
SPDIF信号は完全な周期信号では無いので、オシロで同期をかけても重なってしまうのですが、リンギングが凄いことになっています。デジタル信号の伝送だから問題ないといえばそうなのですが。
別のファイヤーワイヤー系のインターフェースで測定してみると綺麗なものがありました。
別のオーディオインターフェースの96KHzSPDIF出力波形
ただこれにも疑問があって、出力電圧が小さいような気がします。先ほどのhiFaceと同じ電圧スケールにするとこうなります。
別のオーディオインターフェースの96KHzSPDIF出力波形(fiFaceと同じ縦軸スケール)
同軸出力って結構いい加減なんですね。ジッターを気にするのもいいのですが、厳密には波形もきちんとしないと伝送系でジッターが乗り兼ねません。75Ωを10MHz位で駆動するというのは電子回路にとっては結構大変なことなので、もうちょっとこの辺をきちんとしないといけないのかもしれません。
(2012/03/04)