パワーアンプの基板設計の重要性について

弊社のパワーアンプの性能がいい事はスペックを見て頂ければわかると思いますが、なぜ良くなったかを一言で説明するのは難しい点もあります。アンプ回路は性能が出やすい回路構成とはいえ、従来からあるもので新規回路というほどのものではありません(もちろんいろいろと工夫はしている点は多々ありますが)。よくなった原因は従来は局所帰還で逃げていたものを、出力段からのトータルのNFBを高域まで安定にかけられる様にプリント基板を最適化した事です。これはいくら口で言ってもみなさんピンと来ないようで、説明した人に首を「うんうん」とうなずいてもらった記憶がありません。先日の引越しの際に古いパワーアンプの基板が出てきたので(貧乏性なので過去の基板が捨てられない)少しまとめてみました。以下の写真はパワーアンプ用のプリント基板で試作当初から現在の製品に至るまでの変遷を表しています。

思いつくままにポイントを列挙すると、

  • 各プリント基板は動作させたあと位相補正の最適化、必要に応じてCRの定数変更、(バラック配線による)配線・回路変更等を各基板ごとに行っています。ですので各基板毎の限界特性を見ているといってもいいかと思います。
  • 各最適化、調整時の完成度の指標としては、過度応答、歪率特性等を使用しています(この過程では試聴などはまったくあてになりません)。
  • 出力段からのNFBをかける際には基板毎の限界があるのですが、その障害の原因を探り改善するという正攻法で改善しています。
  • すべての基板を保存しているわけではないのでところどころ抜けています。
  • 以下の写真を見てもそれだけでは何をどう変えてよくなったのかとういう詳細はわかりません。基板の設計思想はノウハウなので解説できませんが、証拠としてご覧いただいています。

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残念ながらあまり詳細に記述できないのですが、現プリント基板のバージョンは5世代目位です。さらにこの他にも当初はプリアンプ基板に電力出力段を増設したものを試したり、他のアンプ回路も試しているのでこれらがすべてという訳ではありません。これらの基板最適化だけでトータル1年以上費やし、もっとも労力を割くことになりました。その結果何がよくなったかといえば、MHz帯の高周波領域まで安定にNFBをかけられる様になったので、高域の歪率が減少しました。その推移を表したのが下図です。

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           パワーアンプの10KHzの全高調波歪率特性(8Ω負荷)

現製品では10KHzの歪率特性が0.01%から0.001%レベルにまで低下しているのがわかります。この10KHzの歪率特性はよくできたアンプよりも一桁低い値です。これだけ下げても1KHz以下の歪率と比較するとやや大きい値になっています。これ以上はA級動作にするか、より進んだ回路構成にする必要があると思います。ただ、このレベルになるともう十分で実際高域の歪が聞こえるというレベルではないと思います。

この10Khzの歪は最終段の電力増幅用のトランジスタによるスイッチング歪であることがわかっています(無負荷では0.0005%であるのに対し、8Ω負荷にすると一桁上昇しているので)。一方1Khz以下では8Ω負荷でも低歪なのに10Khzで歪率が上昇するのは高域では(NFBを安定にかけられないために)NFB量が減少しているからです。市販アンプの中には(というかほとんどが)A級アンプなのに歪率がこれよりも一桁以上多いものがあります。そういったアンプは本当にアンプの検討をしているのだろか?と首をかしげてしまいます。

これだけ低歪にすると歪なく音楽を楽しめるのかというと、実はそうは問屋が卸しません。低歪のアンプで音楽を聴くと、低歪に聞こえるのではなく、むしろ他の箇所の歪がよりはっきり聞こえるようになるのです。ほとんどの場合はソースの歪で、歪感の少ないCDは非常に良いのですが、CDによっては小さな歪まで聴き分けられてしまいます。例えて言うならば、ものすごい高解像のめがねをかけて非常によく見えるようになったとしても、異性がきれいに見えるわけではなく、しわや毛穴の汚れが見えるようになってかえって気になってしまうといったらニュアンスが伝わるでしょうか。もちろん、良い録音のソースを聴いたときのリアル感は絶品で、後戻りできるものではありません。

以上パワーアンプの基板について説明しました。

新事務所のご案内(2)

事務所を移転して早くも1ヶ月が過ぎ、だいぶ落ち着いてきました。今度の事務所はスペースが広くなっており、試聴スペースが作業スペースを分かれておりますので、在籍時は常時試聴に対応する事ができます。気の早い方には既にご来訪いただきご試聴いただいております。

最寄り駅は東急池上線、戸越銀座駅(五反田より2駅)で徒歩6分、中原街道沿いの青いマンションの2階になります。以前の五反田駅からは若干離れていますが、その分サービスの向上にはなっていると思います。

またセレクター、小物等の製品展示スペースも確保しておりますので、より直接購入にも対応しやすくなりました。また、すぐに購入したいとか、製品を見て、聴いて購入したいという方には便利になったと思います。

<試聴のコツとお願い>
(–>申し訳ございませんが現在、直接購入、事務所での試聴はお断りしております。4/6/10記)
・常時試聴可能ですが、不在の場合もございますので必ず事前にお問い合わせ下さい。
・試聴のお時間はおおむね1時間内でお願いします。10曲位が限度だと思います。音楽鑑賞会ではないのでご理解の程お願いいたします。
・お客様が日常聞いてらっしゃるCDをお持ちいただく事はもちろん結構ですが、弊社のお薦めのCDも2,3曲聴いていただくことをお薦めします(お客様のお持ちになるCDは特定のシステムに適した録音を知らずと選んでいる事も多いのではと感じます)。
・弊社は店舗ではなく会社です。こちらにもスケジュールがございますので、できるだけ前日までにご連絡下さい。いきなり「ピンポン」とご来訪いただいても、出荷作業などで時間が取れない場合はお断りする事もあります。

以上、当たり前のことをお願いして申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

試聴設備の様子

スピーカー
製品棚

こちらの2階になります。

新住所はこちら(電話番号も変わりました)
有限会社オーディオデザイン
〒142-0051東京都品川区平塚3-2-15
     クレッセント武蔵小山?、2F
TEL:03-5498-0734
FAX:03-5498-0764

最寄り駅:東急池上線戸越銀座駅
交通:
JR五反田駅から東急池上線に乗り戸越銀座駅(五反田から2駅)で下車、踏切を渡って400m程商店街を歩き、中原街道の荏原2丁目の交差点を渡らずに左に折れ、30m歩いた青いマンションの2階になります。

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最近行ったコンサート -ジョーサンプルとランディークロフォード-

最近行ったコンサートといえばJoe SampleトリオとRandy Crawfordのコンサートです。

 パンフレットはこれ

Joe Sampleさんは古くはクルセーダーズで演奏していましたが、むしろ最近は上手な歌手と一緒に非常に録音の良いCDを出しているので気になっていたのです。Jazz系のCDだと音質が良くても当たり前ですが、このCDの録音はCDの持っている癖を上手に利用した優れものと思っているからです。実際に録音にたずさわった人はかなりの達人だと勝手に判断しています。単にその方が心地よく聞こえるからという理由でそういう録音になっているのか、あるいはCDの特性を技術的に熟知していてわざとそういう録音をしているのかまではわかりませんが結果的にすごいと思います。
  録音の良いCD「Feeling Good」
以前にこのCDのDVD-AudioフォーマットをPCで作成した時に気づいたのですが、音楽信号のレベルがほとんど-3dBくらいに張り付いていました。-3dBというのは最大振幅の70%で、普通だったら時々クリップして耳障りな歪を発生するはずですが、このCDはそういった不快な音はしません。想像するには、わざと録音レベルを通常の2倍くらいにあげて、ひずみそうなところは上手にリミッターがかかっているいるのではないかと思います。昔カセットで録音した人には身に覚えがあると思いますが、録音レベルを下げすぎるとSNも悪く、迫力のない音になりますし、レベルを上げすぎると音が詰まってしまい、結構録音レベルの調整には苦労したはずです。CDのダイナミックレンジは大きいので、そんなにシビアではないのでは?と思われるかもしれませんが、CDの実力は16bit分無い様に思います。低位bit当たりなどは不快なデジタルノイズにまみれていて、その辺から如何に遠ざかるかが(録音レベルを上げられるかが)実際のCD録音・再生のコツだと思っているのです。で、このCDはそういった音をまるめてでも最高位ビットに近いあたりを使用しているので、非常に元気の良い、心地よいサウンドになっているのでは?と思っていたのです。

前置きが長くなりましたが、Joe Sampleさんの最近のCD録音が良かったので、ひょっとしてこの人はこの辺の録音にこだわっている人なのではないか?とずっと思っていたので、実際にコンサートをきいたらもっといいのではないかと思っていたら、丁度東京でコンサートがあるので行ってみたのでした。

そのコンサートはどうだったかというと内容はすばらしかったのですが、Joe Sampleさんが特に音質にこだわりがある訳ではないようです。
まず歌のほうですが、実際に聞いてみるとランディーの歌声というのは自然なのに凄いという感じです。マイクを通しているので生とういう訳ではないのですが、スーと高域まで延びた声が普通に出ているというか、聴いていて心地よいのです。一緒に行った妻も(下手の横好きでJazzボーカルを習っている)今まで聞いたボーカルの中で断トツに一番上手だと言っていました。
演奏の方はどうかというと、演奏そのものはいいのですが音質は残念ながら並でした。普通のPA装置のスピーカーから出てきている音を聞いているので、むしろ家で聴くCDの音質よりも悪いのです。PA装置やマイクセッティングにも特にこだわった点はなく、音質自体はハイエンド機器に比べるとかなり悪いです。

ということで、Joe SampleさんのCDの音質が良かったのは彼が音質にこだわっていたわけではなく、録音したスタッフが優れていたからだということになりそうです。そういった良いエンジニアが録音に携わるという事自体も彼の実力と実績によるものといえば言えなくもないのですが。

こういったJazzのトリオ(+ボーカル)の大物のコンサートはどうしても大きなホールでPA装置を通して聞くことになるので、音質的には家のCDより悪くなります。生演奏を聴きに行っているはずなのに普段聴いている音質より悪いので、この点はトホホです。

クラッシックも小編成の弦楽器などでは同様の事が起こります。大きなホールだと音量も足りず、近くで聞いていても、普段聞いているCDの音質よりも悪く聞こえてしまうことすらあります。Jazzのトリオにしろ、小編成の弦楽器にしろ、本来大きなホールで演奏するものではなく、小さい部屋で演奏するのが自然なので、仕方ないといえば仕方ないのですが・・・。

クラッシックでもJazzでもそうですが、聴衆に実際に聞こえている音の質に気をくばったコンサートというものはできないものでしょうか?