Archive for 1月, 2009

1月 19 2009

オーディオ的にコンデンサーの特性を評価してみよう −フィルムコンデンサーの鳴きを定量化する−

Published by mail under 回路部品編

今回は久しぶりにアンプ部品の特性評価について解説します。

オーディオアンプにおいて使用されるコンデンサーにはいくつかの役割があります。

一つは電源など交流成分(リップル成分)除去の目的で使用される平滑コンデンサ(電解コンデンサ)

2つ目は信号系路上でDC成分除去の目的で挿入されるカップリングコンデンサ(フィルムコンデンサ、電解コンデンサ)

3つ目は位相補正、周波数特性調整に使用される小容量コンデンサ(主にフィルムコンデンサ)
です。

コンデンサの使用場所によっても重要な特性項目は多少異なりますが、 オーディオアンプに使用されるコンデンサの評価項目には次の3点があると思います。

  1. インピーダンス特性
  2. 振動耐性(コンデンサのいわゆる「鳴き」)
  3. 歪率特性

1のインピーダンス特性に関しては以前にコラム(アンプの使用部品の特性(コンデンサ編))で紹介したとおりです。
3の歪率特性は実は測定を試みましたが、簡単に測定できるほど大きくありませんでした(測定器の限界0.0005%以下)。

今回は2の振動耐性についてお話したいと思います。

振動耐性と表現したのは、コンデンサが外部から衝撃を受けたとき、あるいは信号電圧が印加されてコンデンサの電極間に電圧がかかった際に電極間のクーロン力によってお互いが引き合い、電極間隔が変動する事を想定しています。オーディオアンプにおいてコンデンサにかかる交流電圧は数Vから数十Vで、それほど電圧の絶対値は高くないのですが、電極間隔は1μ程度と狭いので結構なクーロン力が働く可能性があります。

オーディオ的な音質上の評価としてはいわゆる特定のコンデンサにはいわゆる「鳴き」と呼ばれる、極端に言えば一種カーンと響くような音が聞こえることがあります。 これは先に述べた電極の振動に由来すると考えられ、この振動耐性(鳴き)を評価することを試みて見ます。

今回測定したコンデンサはプリアンプの出力などに使用されるいわゆるカップリグコンデンサでコンデンサのタイプとしてはフィルムコンデンサになります。

容量は主に2.2uF程度、耐圧は250Vから630Vとなっています。

私に知る限りこの振動耐性を定量的に評価したデータは見た事はなく、したがってその測定方法もこれといったものはありません。

いろいろと試行錯誤の結果、振動耐性を検知できるようになりました(測定方法詳細はノウハウなので秘密です)。

下の図がコンデンサの振動特性の測定波形です。横軸は時間1ms/divで、縦軸はコンデンサの容量変化に比例する(と考えられる)電圧です(1mV/div)。

capacitor-shindou-wave.jpg

約3ms(300Hz)周期でパルス上の変動が検出されています。波形がパルス状なので成分に分解するとすうKhzから数十KHzに相当しますので、丁度聴感上の帯域と一致します。デジタルオシロで波形が撮れれば良かったのですが、単発現象でデジタルオシロでの波形保存ができませんでした。波形の形と周期は各コンデンサ間で大きな違いはありませんでした。

この波形の第一ピークの波高値を縦軸にしていろいろなコンデンサ(すべてメーカが異なるもの)の測定値を調べた結果を次に示します。

capacitor-shindou.gif

横軸は市販価格でプロットしてみました。結果的には価格との相関は何らない事がわかります。測定したコンデンサ中にはこの振動耐性が非常に悪いものがあります。いいものと悪いものでは10倍くらい違います。また高くても振動耐性は何ら良くなっておらず、この点からは価格的なメリットがありません。

このようにグラフにするとすごいのですが、聴感上の差はフィルムコンデンサの中で比較するとそれほど大きいものではありません。一般的にはある特定のコンデンサで微かに鳴いているかな?という程度です。 フィルムコンデンサの良質なものの中では瞬時切り替え比較をしても、実際には判別が難しいくらいのものです。

また電解コンデンサの場合、構造的に電解液でダンプ(制振)されているのでこういった鳴きを検出するのはより困難だと思います。
ただこういった音質と関連する定量的な評価手法を確立しておくと、部品の評価も非常に効率的になるかと思います。

弊社のプリアンプパワーアンプのコンデンサはもちろんこういった解析を通じて性能の良かったものを使用しています。音質の向上が期待できるだけでなく、価格の抑制に貢献していると思います。
以上、コンデンサの鳴きの定量解析でした。

No responses yet

1月 09 2009

パワーアンプのダンピングファクターに関する解説

Published by mail under パワーアンプ

ダンピングファクターの音質に与える影響

一般的にダンピングファクターに関する認識は次に様なことではないでしょうか。

  1. DFが大きいほうが低音に締りが出てくる。
  2. DFが極端に小さいと(<10)低音の量感は増す(実際に低音の音圧レベルも上がることが知られています)
  3. トラジンスタアンプの出力段を並列にするとDFが良くなる

ただし3の項目は以前のコラムにも書いたとおり、実は間違っています。トランジスタアンプの場合、同じ放熱器に出力段を並列にして並べると、1段当たりの電流量が半分になるためトランジスタの出力抵抗も2倍になるので、出力段を並列に並べる事に意味はありません。 DFは実際には他の要素で決まっています。

ダンピングファクターとは

話を基本に戻しますが、ダンピングファクター(DF)とは、一般にパワーアンプのスピーカーに対する制動力を表すと考えられている指標で(だからこの名前が付いた)、パワーアンプの出力インピーダンスとスピーカーのインピーダンスの比で表されます。

DF=Zsp(Ω)/Zamp(Ω)
ここでZspはスピーカーのインピーダンス、Zampはパワーアンプの出力インピーダンスです。
一般的なに半導体アンプで100程度の値を示します。この場合スピーカーのインピーダンス8Ωに対して、パワーアンプの出力インピーダンスは80mΩである事を意味しています。

ダンピングファクターの測定方法

ダンピングファクターの測定方法で最も一般的なのはON-OFF法です。 これはパワーアンプの出力にダミー抵抗を接続したときと接続しないときの電圧差をΔVとし、測定電圧をVとすると、
DF=ΔV/V
で計算されます。例えばDF=100の場合、3V出力時(約1W@8Ω)、負荷のある無しによって30mVの電圧差が生じるという事になります。
弊社のパワーアンプDCPW-100(DF>1500)では3V出力時に8Ω負荷をつないだ際の電圧降下は2mV以下という事になります。こう書くと簡単に聞こえますが実際には3.000Vと2.998Vを正確に読み取る必要があるので、有効桁数の多い測定器が必要になります。弊社ではこの目的のために有効数字が6桁のデジタルマルチメーターを購入しました。
dvm320.jpg
0.01mVの単位まで測定できるデジタルマルチメーター

ダンピングファクターの統計解析

市販されているパワーアンプの価格とDFの関係をプロットしてみました。
ピンクの四角印が海外製、丸印が国産アンプで、三角が弊社のパワーアンプです。
power-statisticsdf300.jpg
ピンクの四角印が海外製、丸印が国産アンプで、三角が弊社のパワーアンプです。
(データはハイエンドショー・インターナショナルオーディオショーで集めた半導体パワーアンプのカタログデータから拾いました)

一般に100-1000位に分布していて特に価格に対する依存性は無い様です。中にはDFが3000というパワーアンプがありました(実はこの数値は非常に怪しい)が、他のハイエンド機と比較しても弊社のアンプのDF=1500が非常に優れている事がわかります。
一般にDFが大きく、価格が安い方がいいと考えると、DFを価格で割ったDF/P(/万円)の数値が大きいほど(左上に行くほど)いいアンプと考える事もできます。価格も考慮したDF/Pファクターで考えると弊社のアンプは断トツです。

power-df-statistics-2.gif

ダンピングファクターが音質に与える効果についての考察

とはいえDFの値が音質に直接比例するわけではありません。DFが1と10では音質も大きく違うかもしれませんが、100を超えると例えば低音の締りが良くなるということを必ずしも実感できるわけでないかもしれません。 というのもDF=100とDF=1000の違いはアンプの出力インピーダンスが80mΩか8mΩということで、この差はスピーカーケーブルの抵抗、あるいはウーハーに直列に入っているコイルの抵抗(数百mΩ)によって、実際には見えなくなってしまう可能性が高いからです。
ただ数百以上のDFの効果というのは低音域の大信号に対して高音域が濁らないですとか、低音域の音階がはっきりわかる、低音が静かに聞こえるという様な聴感上の効果があるように感じます。DF=1000というのはスピーカーからの反作用がインピーダンス分返ってきたとしても、それによる電圧変動が1/DF(=1/1000)に抑制できると 考えたほうが妥当なのだと思います。
DFが100のアンプからDFが1000のアンプに変えても、数値から単純に想像する10倍の効果は無いと思ったほうが正解です。

2 responses so far

- Next »