1月 20 2010

これだけは知っておきたい音響工学(その4) -スピーカーセッティングへの応用-

これまで基礎的なことを解説してきたので、次のステップとして少し実践的な事について説明してみたい。

というのがこのコラムの主旨だが、その前に気になることが・・・・、

「杓子定規に正三角形の頂点で聞こうとする人が多すぎる」ということだ。

今は多忙なのでお断りしてるのだが、事務所に試聴に来る人の何割かは正三角形の頂点で聞こうとする。

現在の事務所で試聴用の椅子はSPからある程度離して置いてあるが、わざわざSPの方へ近づいていって聞く人がいるくらいだ。丁度こんな感じで、

iaiaonayiyycyye.gif
スピーカー(SP)の設置の仕方に関しては、よくオーディオのHow to本で解説されている。

が、それとは違ってちょっと逆説的にまとめると、

  1. 2つのSPとの正三角形の位置では聴かない
  2. 左右非対称に設置する

という事を実践した方が良いと思う。
1を説明する前に、2はどういう事かというと、

  • 直接波と1次反射波の距離差が分散するように、SPの後ろの壁、左右の壁、床、天井、試聴者の後ろの壁との距離を調節する

という事である。
まず1について、実例を挙げて説明しよう。下の図は右側が壁、左側半分が空きスペース(部屋の右半分にSPを設置している)のレイアウトである。結果を見やすくするために、反射は1回で計算し、試聴者の後ろの壁(図の下側)は反射無しとした。

sp-layout-hitasihsow.jpg部屋の左半分は使用していないことに注意

sp-hitaishougraph.jpg

この場合の周波数特性をシミュレーションしてみると上図の通りとなる。見ていただきたいのは左右の合成波(青)の特性が平均化されて大きな山谷が抑制されている事である。ステレオは左右の音量・位相差が大事だから左右の差(黒と赤との差)があるのでだめと思われるかもしれないが、実際には500Hz以下の低周波領域は聴感上指向性が小さいので左右の和が重要である。左右の壁の状況を変えることで山谷の周波数を分散させる事によって左右の合成波の特性を平坦化しているのである。

実はこの部屋のレイアウトは現在の事務所のレイアウトに近い。以前はどちらかというと左右対称になるように設置していたが、実際その時よりも定位はずっと良くなって、ボーカルの口の大きさが小さく聴こえて、しかも真ん中に定位するようになったと思う。定位が良くなったのは上記の影響だけとは言い切れないが、狭い常識に捕らわれず、上記の考え方を試す価値はあると思う。

最悪なのは左右厳密に壁からの距離も対称にしてあるレイアウトで、こうなると山谷の周波数が同じなのでそれがそのままの形で周波数特性となって荒れたままになることである。例えばこんな風に

sp-taishousp.jpg 上記のレイアウトの左半分が無い場合

実を言えば、話の順序としては、現在の事務所に引っ越して、採光だとかもろもろの事情で右半分に配置するレイアウトになったのだけれども、結果的には音が良くなったので「何〜でだ」と考えて上記理由を思いついてみたという程度だが。おそらく、もっともな話なのでかなり一般性があると思う。

一応補足しておくと、現在の事務所を選ぶ際に、条件の一つとして床がじゅうたんではない事を必須の条件とした(じゅうたんがあると高音が吸収されてきつい音になるので)。定位が良くなったのは単にこのせいかも知れない。
話を戻すとマニュアル本、定説などは気にせずいろいろやってみた方がいいということだ。いわゆるオーディオの定説はほとんど意味のないことが多いので・・・・(ってこれも定説か)。
関連して、フォーカルの取扱説明書に面白い事が書いてあるので次にそれを説明しよう。

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12月 03 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その3) -壁の影響は壁に聞け-

前回は壁(床、天井も同じ)の反射の影響を説明したが、ここでは実際にその影響を実際の部屋で調べる方法を紹介する。

壁の反射の影響をざっと調べる方法は意外と簡単である。

どうするかというと、
「影響を調べたい壁に耳を近づけて見る」

ということだ 。

そうすると、その壁が音響特性にどの様な影響を与えているか壁が教えてくれる、のである。

これ、冗談ではなくほんとの話です。

もう少しまじめに解説すると、例えば床の反射による周波数特性への影響を調べてみたいと思ったら、スピーカーから音楽を流しながら、耳を床に近づけるのである。そうすると床からの反射の影響がなくなり(正確には高域に移動するだけだが)、床の反射による周波数特性の乱れのない音が聞こえるという仕組みである。

シミュレーションで説明するとこうなる。

次の様な床の反射があるだけの環境で通常の高さ(1m)と耳を床に付けた(0.1m)状態の周波数特性を計算してみると、こうなる。
yukakabe-layout.jpg

yuka-kabe-simu420.jpg

青は耳の高さ1mでの周波数特性、ピンクは高さ0.1mでの特性である。ピンクの場合低域の谷が見事になくなっていることがわかると思う(実際にはなくなっているのではなく、高域側に移動しているだけだが)。実際にマイクを通常の高さから床につけて測定してみると、低域の落ち込みが一部減少し(実部屋では壁がたくさんあるので谷が解消する事は無い)、高域が荒くなる結果となる。聴感上も床に耳を付けた方が低域の力強さが向上する、ただし高域がちょっと荒くなるが・・・・。耳を床につけるのは、実用性がないが、小型SPであれば床に直置きした方が力強さは増す。というよりも、通常の設置方法では床からの干渉効果で低域に谷ができて音がへなへなになっている場合が多いというのが実情だろう。

同様にして、天井、左右の壁、後ろ壁の影響も耳やマイクで確認する事ができる。

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10月 23 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その2) -反射による干渉効果-

前回はコレだけは知っておきたい音響工学(その1)として1/r²の法則を紹介したが、今回は「これだけは知っておきたい音響工学(その2)として、音の反射による周波数特性への影響を考えてみたい。

この反射による影響がオーディオ再生装置の中で最も大きな影響をもたらす重要な現象だ(と思っている)。壁でも床でもいいのだが反射面があると反射した音波が元の音波と混ざる。元の音と反射音は距離差があるので周波数によって強めあったり、弱めあったりして周波数特性がうねる。下の図は後ろの壁から70cmの距離にSPを置いて、リスナーからみて前の壁(SPから見て後ろの壁)の反射波の影響を見たものである。計算には定在波シミュレータ StndWave2使用した。このシミュレーターはフリーソフトだが非常に良くできていて、多くの人に使われている。定在波シミュレータという名前がついているが(おそらく)鏡像をおいて合成和を取っているので、一回反射についても計算できるいわば反射シミュレータだと思う(多重反射にすれば結果的に定在波シミュレーターになるだけ)。

ここで壁の反射率は1とした。反射波の影響で最大値は約3dB大きくなる(音が約2倍になる) 120Hzあたりに干渉による最初の谷が生じる。ディップが−∞にならないのは反射波の大きさが1/r²に減少していると計算しているからである。実際の部屋では他の壁の影響もあって1/r²にはならないのでもっと影響が大きい可能性がある。この谷の影響は最低周波数で最も影響が大きい(幅が大きい)ことに留意して欲しい。さらに100Hz-200Hzの周波数帯域は、オーディオ再生において力強さ、音の厚みに影響する最も重要な周波数帯域だ。その領域に最大の谷が来るので非常に始末に悪い。もっとSPを壁から離せばよいと思われるかもしれないが、谷の周波数が低いほうに移動するだけなので、しかも2番目の谷も下のほうに降りてくるので根本的な解決にはならない。
sp-reflection60cm-2.jpg壁の反射による干渉効果(SP-壁距離60cm)

実際の部屋には前の壁の他に床、左右の壁、後ろの壁、天井など、さらにいろいろな壁があるが、ここで左の壁と(リスナーの)後ろの壁だけ追加してみよう。レイアウトはこの図の通りだ。
sp-listen-layout2.jpg(実は最悪の)仮想リスニングルームのレイアウト

右の壁、床、天井は考慮せず(反射率0とし)、上記壁の反射率はすべて1として、わかりやすくするため一回反射のみとして計算した。

そのときの周波数特性の計算結果がこれである。
sp-worst-listning-position60cm-147cm.jpg仮想リスニングルームの周波数特性のシミュレーション結果

どうですこれ、ひどいでしょ。オーディオ再生で最も重要な帯域(100-200Hz)が「ごそっ」となくなっている。-10dBって1/10の音量になるって事だ。 この帯域はゴールデン帯域といっていい重要な帯域だ。それが、あらら・・・てことになっている。ここで再度レイアウト図を見て欲しい。丁度コレくらいの配置、きわめて一般的ではないですか?。壁とSPの距離が0.6mくらい、ついでにリスナーとその後ろの壁の距離も0.6m、SPの左壁からの距離が1.4m(左壁からの反射波との直接波の距離差が0.6mx2=1.2mになる)というこの配置、実はわざと最悪の特性になる様にねらったものだ。

実際この通りではなくても、一般にオーディオ愛好家の周波数特性が100-200Hzに大きな谷になっている事は非常に多い。「無線と実験」という雑誌が読者(もちろん相当のオーディオマニア)のリスニングルームを訪ねて周波数特性を採る記事が連載されていたが、ここまで顕著ではなくてもこの傾向がある場合が多かったように記憶している。

それと補足しておくと、実際には一回反射ではなく多重反射の影響があるので周波数特性はもっと複雑怪奇な結果になる(なのでここではあえて1回反射の結果を見せた)。それとこの定在波シミュレータで周波数特性をどう計算しても、実際に測定した特性とは残念ながらぴたりとは合わない(なんとなく雰囲気が出るという程度)。このシミュレーターは多分SPの指向性や壁の反射率の周波数特性を考慮していないので、その辺が効いてるのだと思う。もちろんこのシミュレータは非常に役に立つ超優れものだが、その辺は頭において使用した方が良いと言うことだ。

上記の特性だと聴こえる音はそのままでは寂しい音になるので、何をするかというとアンプなどで音色の調整をしたがる(私は安易にそういうこうとはしない)。メーカによっては低域が厚く出る様にわざと音色をつけていると思えるところもある。とはいっても低音を強調する事はできないので、実際には高域が出にくくなる方向に調整する。意識してそうしなくとも多くの意見を取り入れて回路・部品を選択していくと結果的にその方向に落ち着くのだろう。もちろんスピーカーから出た音が心地よければそれでいいのだが、リスニングルームの特性が改善された場合、逆に今度は低音がもやもやするとか、高域の伸びや明瞭さがが足りないように感じてきてしまう事だろう。

以上の話は反射による干渉効果の影響で、最近よく言われる定在波効果とは異なる。定在波効果は壁を傾けたり、聴取位置を定在波の節に位置をずらすと改善されるので、まだ手がないわけではないし、むしろ反射による干渉効果のほうが 音質に与える影響は大きいと思っている。

それではこの反射の影響を緩和するにはどうしたらよいのか?という事についはまだこれだという決定打は残念ながらない。ないが多少の助けになるアイデアはあるので次回はこの続きを紹介できればと思う。

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10月 05 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その1) -1/r²の法則-

<1/r²と干渉効果>

コンサートホールにしろ家でのスピーカーシステムの設置にしろ、音響工学の知識で覚えておくと有益な法則がある。原理自体は工学を学んだものにとっては当たり前のことではあるが、多少オーディオ的に拡張して紹介したいと思う。一つは1/r²則でもう一つは音の干渉効果である。まずここでは1/r²則について説明する。
<自由空間>

    I ∝ 1/r²

球
”1/r²の法則”というのは勝手にここでそう呼んでいるだけだが、音響工学に限らず電気・物理で良く出てくる法則である。音響の分野で言うと、音の大きさが距離の2乗に比例して小さくなるという事である。つまり音源から1mの距離の音にに対して10mの距離の音の大きさは(1/10ではなく)1/100になるという事がミソだ(2乗になると大きさが劇的に変わる事を感じて欲しい)。なぜこうなるかかというと、距離rの球の表面積は4πr²/3になるからで、よって単位面積当たりのエネルギーが1/r²になるからである。この法則はエネルギー保存則からも直感的に把握できる。ただしこれは自由空間と呼ばれる状況で、周りに壁が何も無いときである。例えば無響室等がこれにあたる。

<半自由空間>

hnakyuu2.gif

床だけのある場合も自由空間と同じになる。例えば屋外とか、サントリーホールのように近くに壁が無い場合もその状況に近いだろう。1/r²の法則は同じだが床があると強度は2倍になるので正確には2×1/r²になる。もちろん音の大きさがが1/r²に比例する関係は変わらない。

< 天井高さが低い、あるいは幅が狭い場合>

    I ∝ 1/r 
kukei.gif幅の狭い部屋    kukei2.gif低い天井の部屋

ただし、天井や壁があるほとんどの場合は状況は変わってくる。 比較的低い天井がある場合とか、天井は高いが幅の狭い部屋があって、天井や壁の反射率が高い場合(硬い材料でできている場合)には、音が拡散する空間が限 られてくる。表現をかえれば距離rに対する表面積の増加が制限されているという状況である。

kukei3.gif例えばこの図のように低い天井で壁が近くにない場合は音が横方向だけに拡散するので音が通過できる断面積の面積は、hx2πrになる。ここでhは天井高さである。反射がある場合は本来干渉効果も考慮する必要があるが、ややこしくなるのでここでは考えない。したがって今度は音の強さは1/rに比例する事になる。2乗ではなくて1乗に反比例する点が大きく異なる。1mと10mの距離での音の大きさの違いは今度は(100倍ではなく)10倍である。

< 天井が低く、幅が狭い場合(うなぎの寝床タイプ)>

1/rº (=1)

kukei4.gif

さらに壁、または天井などの反射面が2面ある場合はどうなるかという事を考えてみる。例えば幅が狭く天井があって、奥行きだけがあるようなうなぎの寝床の様な部屋である。この場合奥行きに対して断面積は増えないので音の大きさは奥行き方向に対して変化しないという事になるはずである。数学的には1/r º (=1)に比例するといえる。こういう部屋は実際にはほとんど無いかもしれないが、他の話で言えば光ファイバーや導波管などはこのタイプだといえる。

以上3タイプの部屋の形に対する音の大きさを考察してみたが、形によって劇的に変わるという事をご理解いただけたと思う。音の大きさが1mの距離で100だったとして、今度は10mの距離では自由空間では1(=1/100)になってしまうし、天井があれば10(=1/10)、左右に壁もあれば元と同じ100になる可能性があるということだ。もちろん実際の天井や壁の反射率は1ではないので、そうはならないにしても大変大きな影響があるという事だ。

< コンサートホールに当てはめてみると>

コンサートホールの音質についてはこちらのブログで紹介してる。私の場合、コンサートに行って音楽を聴くと演奏者や指揮者よりも実際に届いてくる音質(ホールの音質)の方が大きく気になるし、ホールによって劇的に変わってくるので、気になってしかたがなかった。上記の法則をコンサートホールに当てはめてみると、音響効果(音質の良さ)との相関が結構みえてくる。サントリーホールは私は非常に反響の悪い(無いという意味で)ホールだと感じているが、それもそのはず周りに反射壁がまったく無いので(あるのは床だけ)、音が非常に小さくなってしまう。こうなるとわずかな反響音の残響時間がどうのこうの言っても始まらない。超高級オーディオ装置を蚊の鳴くような音量で再生しているのと同じで、大音量のラジカセにすら負けてしまうのである。もちろんこれだけでホールの音質を完全に説明できるものではないが、あるい程度の説明ができてしまう(と思っている)。

反対にJTホールの音質がすばらしく良かったのは天井が高いものの、幅が比較的狭いので音が後方にまで非常に豊かに届くからだと思っている。

次にもう一つの非常に重要な干渉効果について次回に紹介したい。こちらの方はスピーカーのセッティングに非常に重要なポイントとなる。

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8月 06 2009

OPアンプはオカマアンプ −でもなんでOPアンプが主流なの?−

最近のアンプは外観は立派だが、その分内容は平凡なものも多い。その典型が数十万円以上するアンプで主信号回路にOPアンプを使用しているものだ。OPアンプがすべて悪いとは言わない、回路の簡素化には大いに約に立つし、性能もそこそこ良い。ただ数十万円するアンプで心臓部がOPアンプというのは、例えて言うなら1000万円の車のエンジンが、軽自動車のエンジンを流用していたというようなもので、それでいいのかと思ってしまう。

ある時、ある高性能OPアンプの等価回路を見ていて驚いたのだが、実は弊社のフラットアンプとほぼ同じ回路だった。もともとこのOPアンプの回路を知っていてフラットアンプをまねて作ったわけではないのだが、結果的にほぼ同じ回路になっていたという事だ。OPアンプの世界はアナログの新回路、新技術が開発される主戦場の様なものだったので、不思議ではない。それにアナログのアンプ回路なんていろいろあるといってもバリエーションはたかが知れているので、いいものを作ろうと思って設計したら同じものだったという事も十分ありえる。下図はOPアンプとフラットアンプの回路図で、目だった違いといえば初段が弊社アンプはFETなのに対して、OPアンプはトランジスタという事くらいか。ついでに言っておくと、このOPアンプは半導体製造プロセスの中では高級なプロセスを使用しており、そのため通常のOPアンプの10倍くらいの価格がついている。その高価格の故か現在は製造中止になっている。

lm6365cir.jpg ある高性能OPアンプの等価回路

flatamp-circuitrev.jpg 弊社プリアンプの回路(わかりにくいかもしれませんが回路的には上記OPアンプと良く似ています)
回路だけを見ると何だOPアンプと同じではないかと思われるかもしれないがOPアンプとディスクリート回路では内容がまったく異なる。どういうことかというと、こういうこと。

1.ディスクリートトランジスタ(Tr)と違って結晶性が悪いのでTrの基本特性が悪い

個別Trはエピタキシャル成長でシリコン結晶を成長させるが、IC(OPアンプ)の場合は結晶に後から不純物を拡散又は注入するので結晶性が悪く、結果的に移動度が下がり高域特性が少なくとも1桁悪化する

2.出力段のコンプリメンタリートランジスタは擬似トランジスタ

OPアンプにしろディスクリートアンプにしろアンプ出力段はSEPP出力でNPNとPNPの組み合わせ(コンプリメンタリー)で+-をスイングする。OPアンプの場合製造工程上、同一基板にNPNとPNPを適切な条件で形成できないため、片側のTrが擬似トランジスタとなり特性が著しく劣る。男女のカップルのはずが「男性とオカマ」、あるいは車の駆動輪の片方が補助タイヤみたいなものです

3.そもそもすべての素子がダイオードでつながっている

OPアンプというよりICというのはそもそも各デバイスの素子分離をPNジャンクションの逆接続で行っている。ダイオードに逆電圧を印加した状態で電流は流れないが、空乏層の容量は電圧に依存して変化するので可変容量コンデンサですべて相互に接続された状態と同じなので寄生容量、寄生トランジスタが必然的に発生する
分離されていると思っていても、いろいろなところが”うじゃうじゃ”つながっているので、正確なところもうどうなっているかわからない

4.抵抗は拡散層か多結晶(粒界もあるよ)

ICの場合実際にカーボンとか抵抗体の皮膜を形成するわけではなく、拡散層あるいはポリシリコンで代用する。ポリシリコンなんてその名のとおり多結晶でしかも配線幅が非常に狭いμ単位ので抵抗体を粒界が横切っているのが普通。粒界には不純物ドーパントが蓄積されたり、ああ気持ち悪い。オーディオの人は抵抗だコンデンサだ、電線だ、はたまたACコンセントなんかに凝るくせに、こういうところにはまったく無関心なのが不思議。というより知らないだけだろう。美味しいと評判のレストランの調理場が超汚く、その汚れが実はスパイスになっていたというようなものか? 実際にはアンプの特性はアンプ内部の直線性などには依存せず、外部のNFB抵抗などで決まるので、直接関係ないといえば無いのだが、興味のバランスが悪すぎると思う。

5.配線はアルミしかも寿命有り

OPアンプなどの汎用ICの配線はアルミです。細い線に電流を流すので電流密度がもの凄く、エレクトロマイグレーション(何じゃそれ)もおきるので、寿命もある。これも超キモイです。

という様にOPアンプの細部を見るととても主信号回路に使いたくなくなるのだが、実際に音質上の変化としては、

  • 音が濁る
  • 情報量が少なくなる
  • 薄っぺらな音に聴こえる
  • 臨場感がなくなる

という結果になって現れる(と思っている)。もちろんこれらは実際には微妙な変化で誰がどの装置で聞いてもこうなるというわけではない(ケーブルなどよりは大きな差だと思うが)。 加えてOPアンプは実装状態での基本性能が実は悪いので、

  • 外付け要因に左右されやすい(本来の性能を発揮しにくい)
  • 高調波歪の成分が複雑(耳につく歪を発生する)

などという事も知っておくべきだろう。 OPアンプの(数値)性能がもの凄く良くても、ちょっとした容量負荷で性能が数分の1に落ちたりする事はよくある。出力インピーダンスの大きな信号源で駆動すると(パッシブプリを使用した場合などに相当)、高域の歪率が1桁以上悪化する事もある。

lm6365gw.jpgある高性能OPアンプの帯域幅と負荷容量の関係(数百ピコの容量負荷で数分の1に落ちる)

lm6365sr.jpgある高性能OPアンプのスルーレート(立ち上がりの早さ)の負荷容量依存性

数百ピコの容量負荷(普通のオーディオケーブルをつないだだけで)で数分の1に落ちる
そうは言ってもOPアンプにも効能はある。例えば、

  • CDはまともに聴くとうるさい事があるので、その”うるささ”を緩和するのには(音の濁りが)役立つ事がある(電解コンデンサを通すようなものといったらおわかりいただけるだろうか)
  • なんと言っても安く仕上がる、その分のコストを外観に振り分ければ、製品としては立派に見える(結果的に評価も上がる)

という事になるのではないだろうか。

もちろんOPアンプの利用価値を否定するものではなく、コストパフォーマンスは抜群だしOPアンプで十分だったり、下手に作ったディスクリートより性能が良くなったりする事はある。ただ高価なオーディオアンプの主信号回路としては???ということである。実は数十万円の主流のアンプににも結構OPアンプが心臓部に入っていて、それが一種の標準になっているので、弊社のアンプの様にすべてをさらけ出すアンプの場合、単純に従来のアンプと入れ替えただけでは良く聴こえない場合もあったりする。もちろん弊社のアンプで調整し(もちろん無調整でよくなる事も多々あるが)いい結果を出した方がひと皮剥けたいい音になるのだが・・・。

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7月 02 2009

「いい音のする部屋ですね」と言う様になれば本物 −誰も言った人はいないが−

事務所の試聴装置で周波数特性を測定してみたら、あれれ?という事(本当は当たり前の事?)があったので報告します。
一言で言うと、スピーカーの周波数特性はスピーカーシステム間の特性差よりも、試聴位置・部屋による差の方が支配的だという事です。

オーディオ再生においてスピーカーシステムの良し悪しを最も大きく左右するするのは周波数特性だと考えていたのですが、その周波数特性を左右するのはスピーカーシステムそのものではなくて部屋・試聴位置の影響が最も大きいのでは?という結果になったのです。

言い換えれば、普段聞いているのはスピーカーシステムの音ではなく部屋・セッティングの音だという事になります。
もちろんスピーカーシステムによって音質が変わる事は重々承知しており、それを否定する気はありませんが、部屋(+設置)の影響の方が大きいという事をまざまざと見せ付けられたという感じです。

結果を説明する前にまず環境を説明します。弊社事務所のレイアウトは現状こうなっています。

office-layout-av3201.jpg事務所のレイアウト

事務所の前後長は8.4mあり、通常の家庭のリスニングルームよりは広めだと思います(約40畳くらい)。床はPタイルという固めの床で(約10mm厚の樹脂のようなもの)特にじゅうたんなどは引いていません。スピーカーシステムを設置する部分には厚さ12mmのフローリング材をクッ ションをはさんで載せ、その上にスピーカーシステムを設置しています。スピーカーから約3-4m離れた位置に視聴用のイスを設置してあります。図の下半分 (SPに向かい左側)はAVラックの後ろに資材などが置かれており、自由空間+吸収・反射材といった 構成です。一方上側(試聴時の右側)は前面窓でガラス+ブラインド(一部カーテン)となっています。

スピーカーシステムの中心線から測定点までの距離を変化させて周波数特性を測定してみました。高さは約1mで試聴位置の高さに近いと思います。

測定マイクはべリンガーのECM-8000、測定ソフトはMySpeakerです。また測定モードは精度を出すために純音を使用して測定しています(ホワイトノイズ+FFT解析ではありません)。結果は次の通りです。

事務所内でのスピーカーシステムの周波数特性

測定スピーカーMAGNAT社Quantum908

測定高さ1m

左側                             右側

mag2ml300.jpgmag2mr300.jpg

SP−マイク間距離 2m

mag3ml300.jpgmag3mr300.jpg

SP−マイク間距離  3m

mag5ml300.jpgmag5mr300.jpg

SP−マイク間距離  5m

どうでしょうか、細かい事を言えばきりがないのですが、つぎの様な傾向があると思います。

  1. 左右の特性差は意外と小さい
  2. 距離が大きくなるほど200,300Hz以下の中低音域の音量が相対的に大きくなる。
  3. 距離が離れるほうが高音特に10Khz以上の高域が落ちてくる。
  4. 低域(100Hz以下) のピーク・ディップの発生する周波数はほとんどの場合距離によってそれぞれ異なる。

左右の特性差が小さいのは左側(図下側)の空間が空いている影響が大きいと思います(つまり通常のリスリングルームでもそうだという事ではないと思います)。視聴用のイスは3-4mSPから離れた位置にあるのですが、普段事務作業で私自身が聞いているのは5m位の位置で、私の好みの場所はこの丁度5m位の位置になります。この部屋ではこのくらい離れて丁度直接音と間接音のバランスが取れる感じになるからです。
上記特性で特徴的なのは3m位置での周波数特性だと思いますが、この特性はスピーカーによるものではなくて、部屋の壁の反射によるものです。最近は特に定在波効果だけがやたらに取り上げられていますが、定在波効果ではなく、反射によるものだと考えています。定在波効果は壁面の角度を少し変えたり、あるいは気になる定在波が生じる周波数で、丁度”節”に当たる距離のところに行けば定在波効果の影響は避けられるので、防止(あるいは低減)する事も難しくはありませんが、問題なのはやはり反射によって生じる干渉効果です。話は戻りますが3m位置での低域の特性を決めているのは後壁の反射によるものだと考えています。
ですので、スピーカーを変えてもほとんど変化しません。例えば右側3mの条件で3種類のスピーカの周波数特性を測定すると

< (右側SP、測定位置3m>
mag3mr300.jpgmagnat40.jpgMagnat社Quantum908(17cm3way,6SP)

rit3mr300.jpgrit50.jpgRIT社(18cm2way,2SP)
bw3mr300.jpgbw40.jpgB&W社CD-NT1(18cm3way,3SP)

となっており、200Hz以下の特性が酷似していることがわかります。もちろん3者で音の傾向は違いますが、それに部屋(試聴位置)の特性がかぶさっており、部屋の影響の方が大きいくらいです。現在の部屋に移転して、以前の事務所よりも音質の評判はが良い様な気がしますが、システムが特に変わったわけではないので、部屋の影響が大きいといえるでしょう。
パワーアンプの後にセレクターを入れて3つのスピーカーシステムを瞬時切換できるようにしてあるのですが、切り替えても意外と同じ様な傾向も聞き取れますし、SPの差よりも事務所が変わった時の音質差の方が大きかったように思います。試聴用イスの位置は3.5-4mくらいで丁度その位置の周波数特性はないのですが、3mと5mの間くらいと思えばいいでしょう。
3m位置で40Hzくらいに大きなピークがありますが、この周波数は音として聴こえるというより、会場の空気のうごめきというかざわつきの様な成分で、実際に試聴してボンボンいう様には聴こえません。むしろサブウーファーを強めに入れた感じでかえって良く聴こえるくらいです。

いづれにしても全体的には200Hz以下の低域がかなり暴れていますので(といってもこのくらいの暴れは普通にあるレベルではあるが)、この辺をもう少しスムーズにしたいと考えています。

という事で、表題にあるように「いい音のする部屋ですね」と言う様になればオーディオの見識としては本物という事になると思います。ただしそういう人はもちろんこれまでにいませんでしたし、これからもいないと思います(このコラムを読んだ人を除けば)。

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5月 27 2009

チャンネルデバイダーの最初の一歩

Published by mail under 製品のコラム

今年のハイエンドショーでは、マルチアンプでスピーカーを鳴らしてみようかと考えていました。せっかくいいダンピングファクターの良いパワーアンプを作っても、ウーハーとの間にはコイルが入っているのでもったいないというか、一度ウーハー直結で聞いてみたいと思ったからです、ショーには結果的にまったく間に合わず、ショーの前には基本的な検討と試作品の基板設計位で終わってしまいました。というのも、いざ作ろうと思って調べてみると、時代は変わっていて、現在はチャンネルデバイダー(というより今はクロスオーバーと言うらしい)は状態変数型のフィルターを使用するのが主流の様です。

状態変数型って何?というのはどこかの解説を見て頂くとして、従来の多重帰還形フィルターと比較してメリット、デメリットをあげると

+周波数とQを独立に設定できる
+カットオフ周波数がフィルターの抵抗値に比例するので周波数可変の目盛りが自然(リニアー)になる

+ 多少回路規模は大きいものの一つの回路でLPFとHPFが同時に得られるので効率的(トータルで回路数が少なくなる)

−負帰還を多段にわたってかけるので高品位アナログ再生回路としては怖い面がある(これは私の考え)

という事になります。

具体的な回路は例えばこんな感じです。

<状態変数型フィルター回路例>(これでLPF、HPF出力が得られる)

ch-devider-1.gif

<多重帰還形フィルター回路例>
ch-devider-2.gif

これらの回路はいづれも24dB/octになります。
現在はオーディオ用のチャンネルデバイダーは品種が非常に少ないと思いますが、PA用の物は結構種類があります。それもものすごく安い、何と1万円くらいからありますし、しかも多機能。購入者のレビューを見ると、音質も十分でこれ以上のものは必要ないとも。それがもし本当だとすると、もうこちらの出る幕は無いわけで、やっぱり一度調べてみる必要がある、という事で一台購入して調べてみました(機種名は伏せておきます、でも写真でばればれ)。

市販PA用チャンネルデバイダー(実売価格1万円)の特性

ch-devider-view.jpg
<外観、機能> コンパクトですが、外観は悪くありません。これですべてバランス入力、バランス出力ですから恐れ入ります。機能も豊富であらゆることができます。これで特性と音質がよければもう出る幕はありません。2way用ですが、カットオフ周波数を300Hzくらいとその10倍の3KHzくらいを中心に大幅に連続可変できるのであらゆる2wayに使用できます。傾斜は24dB/octで、今はこれが普通みたいです。

<特性>
特性を計ってみると・・・・、「良かった」・・・ではなくて、「非常に特性が悪かったので、やる価値があるという事がわかって良かった」という事になります。

ノイズ:まずノイズ特性が悪い、なんと入力ショートで32uV(A補正)出てます。これは弊社のプリの8倍、パワーアンプの5倍です。増幅していないのにこの値は大きいです。

それと歪率:これがまた悪い、1Vで0.3%くらいまで悪化しています。

ch-devider-low-thd.gif クロスオーバー1.2KHz LPF出力の歪率特性

これだけ悪いといいものを作れば明確に優位性が出ると思います。ただ今回測定したものが、状態変数型の特徴を表しているのか、それともこの機種のみこの程度の特性なのかは不明です。

ただ回路図を見て頂ければわかるとおり、多重帰還で作ろうとすると、左右あわせて2wayでも、バッファアンプ12個必要です(24dB/octの場合)。それをディスクリートで組むのは大変ですし、OPアンプで組むと誰が作ってもそこそこ同じになってしまうので、その辺が悩みの種ですね。

という事で今いろいろと知恵を絞っています。

今回いろいろと調べてみたのですが、オーディオ用のCHデバイダー(クロスオーバー)の文献がほとんど無いですね。いわゆるアナログフィルターの理論を記述した教科書はかろうじて見つけられるのですが(これも普通の本屋には既に置いてないことが多い)、オーディオ用となるとMJ誌の金田先生が書いたDCアンプの本(最近発売されているものではなく昭和52年のもの)くらいにしか見当たりませんでした。(ところで昭和52年っていつ?・・・・・ぱっと計算できないくらい昔です)

最近はケーブルとかそういったたぐいの本は多いのだけれど、マルチアンプの様な本当によさげな方式の情報が少ないのは悲しい事ですね。

とりあえずOPアンプで24dB/octのデバイダーを作って特性を検証した後、上手にディスクリートにして仕上げようかと思っています。いろいろと下調べに時間がかかってしまって今回は間に合いませんでしたが、次回(以降)にご期待下さいということで。

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4月 27 2009

パワーアンプの基板設計の重要性について

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弊社のパワーアンプの性能がいい事はスペックを見て頂ければわかると思いますが、なぜ良くなったかを一言で説明するのは難しい点もあります。アンプ回路は性能が出やすい回路構成とはいえ、従来からあるもので新規回路というほどのものではありません(もちろんいろいろと工夫はしている点は多々ありますが)。よくなった原因は従来は局所帰還で逃げていたものを、出力段からのトータルのNFBを高域まで安定にかけられる様にプリント基板を最適化した事です。これはいくら口で言ってもみなさんピンと来ないようで、説明した人に首を「うんうん」とうなずいてもらった記憶がありません。先日の引越しの際に古いパワーアンプの基板が出てきたので(貧乏性なので過去の基板が捨てられない)少しまとめてみました。以下の写真はパワーアンプ用のプリント基板で試作当初から現在の製品に至るまでの変遷を表しています。

思いつくままにポイントを列挙すると、

  • 各プリント基板は動作させたあと位相補正の最適化、必要に応じてCRの定数変更、(バラック配線による)配線・回路変更等を各基板ごとに行っています。ですので各基板毎の限界特性を見ているといってもいいかと思います。
  • 各最適化、調整時の完成度の指標としては、過度応答、歪率特性等を使用しています(この過程では試聴などはまったくあてになりません)。
  • 出力段からのNFBをかける際には基板毎の限界があるのですが、その障害の原因を探り改善するという正攻法で改善しています。
  • すべての基板を保存しているわけではないのでところどころ抜けています。
  • 以下の写真を見てもそれだけでは何をどう変えてよくなったのかとういう詳細はわかりません。基板の設計思想はノウハウなので解説できませんが、証拠としてご覧いただいています。

power-pcb1st.jpgver.1

power-pcb2nd.jpgver.2


powerpcb4th.jpgver.4

powerpcbprod.jpgver.5

残念ながらあまり詳細に記述できないのですが、現プリント基板のバージョンは5世代目位です。さらにこの他にも当初はプリアンプ基板に電力出力段を増設したものを試したり、他のアンプ回路も試しているのでこれらがすべてという訳ではありません。これらの基板最適化だけでトータル1年以上費やし、もっとも労力を割くことになりました。その結果何がよくなったかといえば、MHz帯の高周波領域まで安定にNFBをかけられる様になったので、高域の歪率が減少しました。その推移を表したのが下図です。

power-pcb-genereation.gifパワーアンプの10KHzの全高調波歪率特性(8Ω負荷)

現製品では10KHzの歪率特性が0.01%から0.001%レベルにまで低下しているのがわかります。この10KHzの歪率特性はよくできたアンプよりも一桁低い値です。これだけ下げても1KHz以下の歪率と比較するとやや大きい値になっています。これ以上はA級動作にするか、より進んだ回路構成にする必要があると思います。ただ、このレベルになるともう十分で実際高域の歪が聞こえるというレベルではないと思います。

この10Khzの歪は最終段の電力増幅用のトランジスタによるスイッチング歪であることがわかっています(無負荷では0.0005%であるのに対し、8Ω負荷にすると一桁上昇しているので)。一方1Khz以下では8Ω負荷でも低歪なのに10Khzで歪率が上昇するのは高域では(NFBを安定にかけられないために)NFB量が減少しているからです。市販アンプの中には(というかほとんどが)A級アンプなのに歪率がこれよりも一桁以上多いものがあります。そういったアンプは本当にアンプの検討をしているのだろか?と首をかしげてしまいます。

これだけ低歪にすると歪なく音楽を楽しめるのかというと、実はそうは問屋が卸しません。低歪のアンプで音楽を聴くと、低歪に聞こえるのではなく、むしろ他の箇所の歪がよりはっきり聞こえるようになるのです。ほとんどの場合はソースの歪で、歪感の少ないCDは非常に良いのですが、CDによっては小さな歪まで聴き分けられてしまいます。例えて言うならば、ものすごい高解像のめがねをかけて非常によく見えるようになったとしても、異性がきれいに見えるわけではなく、しわや毛穴の汚れが見えるようになってかえって気になってしまうといったらニュアンスが伝わるでしょうか。もちろん、良い録音のソースを聴いたときのリアル感は絶品で、後戻りできるものではありません。

以上パワーアンプの基板について説明しました。

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3月 26 2009

オーディオアンプの左右独立電源について考える(2) -パワーアンプ編-

前回のコラムで左右独立電源にについてプリアンプを念頭に置いて解説しましたが、やや説明というか内容がわかりにくかったかもしれません。今回の話はその続きですが、さらにわかりにくいかもしれませんがお付き合い下さい。今回はパワーアンプの左右分離電源について考えてみます。

パワーアンプというのは電力供給系とアース系の処理がかなり複雑にならざるを得ず、しかもこの配線の仕方が非常に重要です。 パワーアンプの電力系の配線に非常に太い線材を使用しているとしても50mΩ/m位の抵抗がありますから、20cmで10mΩ、ここに5A流れればこれだけで50mVの電圧が発生する事になります。50mVというのは通常のパワーアンプの残留ノイズの1000倍になりますから、結構な大きさです。まあ、無信号時には5Aも流れないでしょうが、平滑用電解コンデンサに流れているリップル成分とかはそこそこあると思いますし、いずれにしろ通常の小信号理論だけで考えているととんでもないわなに落ちる事があります。ちょっと横道にそれますが、パワーアンプというのは

1.通常の電子回路の技術に加えて、

2.電力系統としての取り扱い(強電分野)とそして

3.高周波領域の電子回路の知識(想像力)

という3点の考察が必要になります。通常の電子回路の技術者はこのどれか1分野の専門家でこれらの3つのすべてに通じているというという事はなかなかないと思います(これに加えて世間一般ではデザインとか機械強度なども問題になるのかもしれないが・・・・)。ですのでパワーアンプというのは詳しく見てみると製品の弱点も露呈しやすいのです。

話を元に戻すと、そのパワーアンプですが、電力系統の配線が難しいといいましたが、どういう事かというとこういう事です。

power-g-wirering2.gifパワーアンプの回路部品(アース配線はこのGと書いた記号をつないでいく)

上の図はパワーアンプの電圧増幅段に安定化電源を使用した場合の部品構成を簡略化して示したものです。この図で例えばGとかいたところはアース電位になるべきなので、すべて接続します。Gの接続方法によってノイズレベルは大きく変わってきます。その接続の仕方はこの場合で単純に組み合わせと考えてもGの数が17なので一筆書きで配線した場合 (17-1)! (=16*15*14・・・・)となって約21兆通り、まあ実際に自然な接続の仕方だけでも数十通りはあると思います。よく言われるのは一点アースと呼ばれる考え方で、ここでいうとすべてのGをシャーシアースに接続するということでしょうか?この一点アースは基本的にはその通りなのですが、必ずしも最適な配線方法ではありません。

配線の仕方・考え方は苦労して習得したノウハウなので詳細は秘密なのですが、かわりに配線が上手にできたかをはかるバロメーターをお教えします。それは残留ノイズです。残留ノイズは入力をショートしたときに出力に現れるノイズ成分ですが、配線が不適切だとその分ノイズ成分が大きくなる傾向があります。下の図は市販パワーアンの残留ノイズを比較したものです。通常よくできたパワーアンプの残留ノイズは数十uV(A補正)レベルです。酷いのになると数百uV以上あります。ちなみに弊社のパワーアンプの残留ノイズは平均で7uVでこれはもう抵抗が原理的に発生するノイズレベル(黄色の領域)に近いのです。すなわち余計なノイズをほとんど拾っていないのですが、一般のパワーアンプでは配線材の引き回しによってピンクの矢印の分だけノイズを拾っているといえます。

power-noise-earth.gif■が他社のアンプ△が弊社のパワーアンプのの残留ノイズ、黄色は抵抗の熱雑音レベル

老舗アンプメーカーの配線もかなり怪しいというものがあります(カタログの内部写真からわかってしまう)。そもそもよくあるパワートランスと電解コンデンサ を中心に配置して両脇にアンプ基板を配置するという構成は見ためには安定感があっていいのですが、配線上は問題を抱え込みやすいのです。左右のアンプの基板の中に電力系のトランスと電解コンデンサが並んでいる ので、配線が長くなって、アンプ回路の中にノイズ源を抱え込んでしまっている様なものなのです。

さらに実際問題として、残留ノイズがパワーアンプ単体では聞こえなくてもプリアンプに接続するとハムが聞こえるというケースもあります。これはパワーアンプの入力線によってループができて、そのループの磁束変化を検出しているのだと思います。実際に電力ラインの配線化を徹底的に行うとこの種のハムも消えるので、配線の不適切な部分が使用状況によって露呈しているだけという言い方もできます。トータルで同じ電源容量で左右分離電源にしたら音質が向上したというケースがあったとしても、この様な配線の不備が緩和されただけというケースもあるの思うので、それだけの結果で左右分離電源の方がいいと結論付ける事は早計だと思うのです。配線を最適化するという観点からも左右共通電源のの方がまとまりやすく、性能も出やすいということも確かなのです。

もちろん左右分離電源パワーアンプには
1.同じ電源構成(トランス容量、コンデンサ容量)で左右独立構成として、総電源容量が結果的に2倍になれば音質も当然良くなることが期待できる。

2.ステレオアンプからモノーラルアンプx2にすると、パワーアンプの配置がSPにも近くなるので結果的にSPケーブルも短くなって音質も向上する。

という効果は期待できます。

ですので左右分離電源がいいとおっしゃる方は弊社のパワーアンプのを2台購入いただき、(片CH使用しないで)モノーラルアンプとしてお使いいただくか、バイアンプ構成で高音、低音にそれぞれのCHを振り分けて頂ければより音質は向上すると思います。
以上パワーアンプの左右分離電源について考えてみました。

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2月 27 2009

オーディオアンプの左右独立電源について考える(1) -プリアンプ編-

以前に安定化電源の性能をコラムで紹介しましたが、今回はアンプの電源構成などに広げて考えてみたいと思います。

一般にオーディオアンプの電源は左右独立電源の方が良いと思われている方が多いのですが、私に言わせると逆効果の場合が多いと思います。
一般に左右独立電源のメリットとして挙げられているのは次のような事だと思います、

  • 左右独立なのでお互いの信号が干渉しない
  • なので音質も良くなる

ところが(少なくとも良質な安定化電源を使用した場合)、上記に技術的な根拠はまったく無く、逆に以下の短所があります、

  • 左右分離により電源配線、アース配線の引き回しが長くなる(アンプの信号理論ではアースと電源は等価(同じという意味)です)
  • 多重アースの原因となる、またアースループの懸念もある
  • 左右独立電源は当然コストがかかる、同じコスト内で比較すると左右独立電源の方が当然貧弱になる

という様な事です。

ただしパワーアンプを2台に分けてモノーラルにするのは大いに意味があります。これは独立電源というよりセパーレートアンプ化でスピーカーの近くにパワーアンプを配置するという点だけでもメリットがありますので。パワーアンプに関しては別途説明させて頂きますが、ここではプリアンプあるいはパワーアンプの電圧増幅段と考えて頂きたいと思います。

なぜ左右独立にしても効果が無いと考えるかというと、電源を左右に分けても結局は左右つながっているから(電子工学的には分離されていないから)です。

左右独立電源の内部配線の引き回しはこうなります。
ampregsepaos300.gif<左右独立電源の回路図>
ここで太い黒線はアース線で、赤い線はプラス側の電源の供給線になります。また右上に延びているのが入力ケーブルのアース側を現しています。赤い線は電源電圧の分だけ高い電圧にありますが、アンプの交流信号理論上はアース線とまったく同じです。半導体アンプは普通プラスマイナスの電源が供給されますが、マイナス側は省略しています。緑の領域がアース線(電源線を含む)で囲まれた領域になります。

一方、共通電源の場合はこうなります

ampregcomrs300.gif<左右共通電源の回路図>
左右共通電源の方が緑の領域が小さい事がわかります。これらの図は簡略化した図ですので大差ないように見えますが、実際のアンプでは配線の引き回しはもっと長い事が多いので、結構なちがいになります。この様に左右独立電源は意味がないだけでなく、配線の引き回しが必然的に長くなり、かつアース線のループ(単なる多重アースとも考えられるが)も大きくなります。

安定化電源基板が不完全であれば電源電圧変動の影響も考慮する必要があるのですが、よくできた安定化電源の場合、少なくともプリアンプでの使用状況では電源電圧の変動がまったく無いので、この図の通りです。弊社の安定化電源などは出力インピーダンスが10mΩ程度で、これは実用状態の1000倍の出力電流変動(200mA)を起こした際にやっと2mVだけ電源電圧が変動するというレベルで測定するのが大変なくらいです。万が一電源電圧変動があったとしても現代のアンプは差動アンプ構成なので電源電圧変動の1/1000程度の成分しか出力には現れません。

左右独立電源にしても結局は配線が(アース配線を互いに接続するので)つながっているので意味がないのです。言い換えれば「左右独立電源にする」というのは左右が独立になるのではなく、単にアースラインを長く引き伸ばすということと等価です。
さらに最悪なのがプリアンプなのにわざわざモノーラルコンストラクションと称して左右のシャーシーを分離することです。

ampregmonors400.gif
<モノーラルコンストラクションの回路図>
内部で両シャーシーを接続していなくても(図中点線で示した)後段のパワーアンプで接続されているか(ステレオ(2CH)パワーアンプを使用した場合)、電源コードのアース線を通じて両シャーシーが接続された場合は最悪となります。

なぜ悪くなるかというとアース線で囲まれた領域が大きくなるためで、わざわざ外部の磁束変化を大きな網で受け取ろうとしている様な物です。

こうなると実際の使用状態になると明らかに音質が劣化しているのではないかと他人事ながら心配してしまいます。実際この辺に凝っている人(あるいは運悪くこういったアンプを手に入れてしまった人)にかぎって、半導体アンプなのにハムに悩まされていたりしている方がいるのです。

この辺の事情は実際にアンプを作る人(それもかなりの上級者)でないと考察できないので、むしろ下手なノウハウは導入しないほうがいいのです。いくら知識の豊富なオーディオ暦の長い人に聞いても迷宮入りしてしまう事になりかねません。

今回の説明はちょっとわかりにくかったかもしれませんが、左右分離電源、モノ構成というものが、よくよく考えてみるとメリットが無い(弊害はある)という結論にどうしてもなってしまいます。

お客様の中には左右別電源にこだわる方も多く、プリアンプの電源を左右別電源にしたものを何台か特注でお引き受けした事がありますが、出荷前の試聴検査ではいつものプリとの差は私自身には感じられませんでした。ただお客様のほうが微妙な差を感じられる事も多いですし、特性も特に悪化はしていないので、お客様自身の満足度としては高くなることがあると思います。
ただパワーアンプになるとまた説明・解釈が若干異なってきますので、この辺は別の機会に紹介したいと思います。

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