1月 16 2012
パワーアンプのちょっと深い話(2) −出力段のスイッチング歪−
パワーアンプの出力段は通常AB級動作が一般的です。オーディオ信号に対してNPNトランジスタとPNPトランジスタで+-交互に電流を流しているのです。もっとも無信号(微小信号)時にはアイドリング電流としてNPN,PNP両トランジスタに電流が流れているので、この領域ではA級動作ですが。
また一般にパワーアンプの高域の歪は出力トランジスタがカットオフするために発生しているといわれています。過去解決策として擬似A級動作する様々な回路も提案された様です(これらの擬似A級回路は各社のノウハウとなっているようで回路が開示されているものは無い様です)。
その擬似A級の出力段を使えばパワーアンプの高域歪が低減できる可能性がありますので、その有効性を調べて見ました。擬似A級出力段回路は特に開示されているものが見当たらなかったので、独自に(苦労を重ねて?)考案しました。
最初に一般的なパワーアンプの出力段の回路を示します。3段ダーリントン出力段の基本回路で、実際のパワーアンプには位相補正、バイパスコンデンサ、保護回路などが付属していますが、ここでは省略しています。
パワーアンプ出力段の回路
この回路に出力に8Ω負荷を接続してサイン波を入力した時の最終段のパワートランジスタのエミッタ電流を実際に測定したのがこちらです。


(NPNトランジスタ部) (PNPトランジスタ部)
<パワーアンプ出力段の出力電流特性>
バイアス電流を流してAB級動作をさせていても、負荷に電流が流れる際にエミッタ抵抗(RE1又はRE2)に電流が流れてバイアス電圧をキャンセルしてしまうため、トランジスタがカットオフしてしまいます。エミッタ抵抗は熱暴走を抑止するためには必須であるため、トランジスタのカットオフを防ぐ手段はありません。
一方、回路を工夫して出力段がカットオフしないようにすると、次のようになります。


(NPNトランジスタ部) (PNPトランジスタ部)
<パワーアンプ出力段(擬似A級)の出力電流特性>
NPN,PNPが交互に電流を流すの同じじですが、常に最低限の電流が流れているところが相違点です。
それではこれらの歪率特性を比較してみましょう(テスト用のシャーシーで測定しているため通常より大きめに出ています)。
まず通常のスイッチング型のSEPP出力段の特性はこちらです。
通常のSEPP出力段の歪率特性
負荷のない場合は0.005%くらいで低歪です。8Ω負荷では周波数によらず一桁増加して0.05%くらいになっていることがわかります。
さて肝心の擬似A級出力段の歪率特性はこちらです。
擬似A級出力段の歪率特性
この結果を見ると残念なことに擬似A級としても(カットオフを防止しても)何ら効果は無いようです。結局パワートランジスタのカットオフ自体が歪みの原因ではないのではないかと思います。もちろんカットオフはしていなくてもスイッチング(NPNとPNPで交互に電流を供給する)はしているわけで、擬似A級にしたから問題が解決するということではないようです。
いろいろ検討していますという例として、今回は擬似A級の結果を紹介して見ました。
蛇足ですが、最近市販されているA級アンプ(ホントの純A級アンプ)は弊社のAB級アンプよりもは歪率が一桁くらいは悪いので、純A級にすれば低歪ということではなく、実際にはそのアンプの作り方(回路、実装技術)の方が歪率には効いているということもお忘れなく。
バイポーラートランジスタ出力段のパワーンプの歪率特性例


現在の事務所での周波数特性(JBL4429、Lch、3m)
周波数特性のシミュレーション結果(20Hz-500Hz)
現在の事務所のレイアウト(事務所の1辺が8.4m)
天井からの反射の影響
床からの反射の影響
右側の壁からの反射の影響
左の壁からの反射の影響
スピーカー対向面の壁の影響
JBL4429(L)の3mでの周波数特性




ヘッドホンの周波数特性を自分の耳で測定する方法
ヘッドホンアンプに搭載したアッテネーター
ゼンハイザーのHD-595の聴感周波数特性(低域の伸びが素晴らしい)
ソニーのMDR-Z1000の聴感周波数特性(けっこうかまぼこ)
AKG-K702の聴感周波数特性(フラットで帯域も広く申し分ない特性)



CDP−555ESDの高周波ノイズ(全体にまんべんなく出ている、凄い)
50万円のCDPの高周波ノイズ(強烈なピークがあります)
DV-600AVの高周波ノイズ(比較的少なめですがピークあり)
DAC-FA0の高周波ノイズ(目だったピークはありません。FA0の測定時期が異なるせいか、線の見え方が異なりますが条件は同じ(はず))
CDP−555ESD+パッシブLPFの高周波ノイズ(ノイズがほとんど取れている)







