1月 16 2012

パワーアンプのちょっと深い話(2) −出力段のスイッチング歪−

パワーアンプの出力段は通常AB級動作が一般的です。オーディオ信号に対してNPNトランジスタとPNPトランジスタで+-交互に電流を流しているのです。もっとも無信号(微小信号)時にはアイドリング電流としてNPN,PNP両トランジスタに電流が流れているので、この領域ではA級動作ですが。

また一般にパワーアンプの高域の歪は出力トランジスタがカットオフするために発生しているといわれています。過去解決策として擬似A級動作する様々な回路も提案された様です(これらの擬似A級回路は各社のノウハウとなっているようで回路が開示されているものは無い様です)。

その擬似A級の出力段を使えばパワーアンプの高域歪が低減できる可能性がありますので、その有効性を調べて見ました。擬似A級出力段回路は特に開示されているものが見当たらなかったので、独自に(苦労を重ねて?)考案しました。

最初に一般的なパワーアンプの出力段の回路を示します。3段ダーリントン出力段の基本回路で、実際のパワーアンプには位相補正、バイパスコンデンサ、保護回路などが付属していますが、ここでは省略しています。

sepp-cir420.jpgパワーアンプ出力段の回路

この回路に出力に8Ω負荷を接続してサイン波を入力した時の最終段のパワートランジスタのエミッタ電流を実際に測定したのがこちらです。

1khz8ohmvre240.jpg1khz8ohmvre-m240.jpg
(NPNトランジスタ部)             (PNPトランジスタ部)
<パワーアンプ出力段の出力電流特性>

バイアス電流を流してAB級動作をさせていても、負荷に電流が流れる際にエミッタ抵抗(RE1又はRE2)に電流が流れてバイアス電圧をキャンセルしてしまうため、トランジスタがカットオフしてしまいます。エミッタ抵抗は熱暴走を抑止するためには必須であるため、トランジスタのカットオフを防ぐ手段はありません。

一方、回路を工夫して出力段がカットオフしないようにすると、次のようになります。

1khz8ohmnonvre240.jpg1khz8ohmnonvre-m240.jpg
(NPNトランジスタ部)              (PNPトランジスタ部)
<パワーアンプ出力段(擬似A級)の出力電流特性>

NPN,PNPが交互に電流を流すの同じじですが、常に最低限の電流が流れているところが相違点です。

それではこれらの歪率特性を比較してみましょう(テスト用のシャーシーで測定しているため通常より大きめに出ています)。

まず通常のスイッチング型のSEPP出力段の特性はこちらです。
orgsepp.jpg通常のSEPP出力段の歪率特性

負荷のない場合は0.005%くらいで低歪です。8Ω負荷では周波数によらず一桁増加して0.05%くらいになっていることがわかります。
さて肝心の擬似A級出力段の歪率特性はこちらです。
nonsw-sepp.jpg擬似A級出力段の歪率特性

この結果を見ると残念なことに擬似A級としても(カットオフを防止しても)何ら効果は無いようです。結局パワートランジスタのカットオフ自体が歪みの原因ではないのではないかと思います。もちろんカットオフはしていなくてもスイッチング(NPNとPNPで交互に電流を供給する)はしているわけで、擬似A級にしたから問題が解決するということではないようです。

いろいろ検討していますという例として、今回は擬似A級の結果を紹介して見ました。

蛇足ですが、最近市販されているA級アンプ(ホントの純A級アンプ)は弊社のAB級アンプよりもは歪率が一桁くらいは悪いので、純A級にすれば低歪ということではなく、実際にはそのアンプの作り方(回路、実装技術)の方が歪率には効いているということもお忘れなく。

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1月 09 2012

パワーアンプのちょっと深い話 −出力段はトランジスタかFETか−

一般にパワーアンプはアンプ類の中では不完全な部分も多く、それだけに音質差がつきやすいと思います。負荷になるスピーカーの4-8Ωというインピーダンスは実際に数Aの電流が流れます。電子機器というより電力機器でこれを20Khzの信号まできちんと制御するのは実は至難の業だからです。

俗にFET出力段のパワーアンプはxxという音質とか、FETデバイスにしたのでyyyとかいろいろ巷では表現されることがありますが、実際にバイポーラートランジスタとパワーFETをパワーアンプの出力段として比較した場合、どういった違いが出てくるのでしょうか?
今回この点について見解を述べてみたいと思います。

<一般論>
一般にFETデバイスは2乗特性と言われており(入力電圧の2乗に比例して電流が流れる)、そのため出力段をAB級動作させた際生じるスイッチング歪が小さいといわれています。ところが、ここが肝心なところですが、入力容量が大きいため前段のドライブ段の増幅回路の負荷が高域で低下し、高域の歪が増加しやすいという欠点もあります。実際のアンプではどうなっているのでしょうか?最初にアンプの教科書に掲載されている歪率を紹介しますと、

バイポーラートランジスタを出力段に使用したパワーアンプの歪率特性は
bipolar-text.jpgバイポーラートランジスタ出力段のパワーンプの歪率特性例

一方、FETを出力段に使用したパワーアンプの歪率特性は
fet-text.jpgFET出力段使用のパワーアンプの特性例

基礎トランジスタアンプ設計法、ラジオ技術社、黒田徹著より

この様にFETを出力段に使用すると歪率特性的には特に高域で悪化するのが普通です。最近よくあるパワーFETをたくさん並列動作させたものなどはもっと悪くなる恐れがあります。まあ通常聴感上は歪を感じるほどではないかもしれませんが・・・。

<オーディオデザインの比較結果>
FETとトランジスタで単純に比較する前にパワーFETを出力段に使用するには幾つか気を付けることがあります。それは、
・発振防止のためゲートに抵抗を挿入する
・位相補正コンデンサの最適化を入念に行う
・ゲートの入力容量をドライブするためにエミッタフォロア-で駆動する
特に位相補正はFETの入力容量が信号の大きさで変わるために非常に難しく、ある所で妥協するほかありません。まあこういった詰めを入念に行った上でできた特性として紹介しますが、弊社のパワーアンプ基板にパワーFETを装着した際の歪率特性を通常のバイポーラートランジスタと比較するとこうなります。

bipolar.jpgバイポーラートランジスタ出力段のパワーアンプの歪率特性

fetamp.jpgパワーFET出力段のパワーアンプの歪率特性

下がFET出力段を使用した時の歪率特性ですが、バイポーラートランジスタを使用した標準のパワーアンプと比較して、ほとんど同じくらい低歪で、特に高域はバイポーラートランジスタより良くなっています。この結果はFETの2乗特性によって出力段の歪が低下するという原理が現れていて、理想的な特性に仕上がっていると言う事ができます。

<バイポーラートランジスタとパワーFETの音質差>
さてこの様な特性下で音質を比較したらどうなるでしょうか?

答えは「判別がつかない(位どちらも良い)」です。
FET出力段にすると特有の音質がするものと思っていましたが、実際にこの2つを比較試聴するとほとんど同じで、シャーシー間の差以下の音質差でした。

パワーアンプを設計した際、実は出力段のデバイスにパワーFETも接続できるように当初から設計していました。製品のパワーアンプに使用しているのはバイポーラートランジスタですが、あとで直ぐにFETアンプを出そうと思っていたのです。一般にFET出力段のアンプの方が低音域が力強い音が出るといわれており、私自身もこれまでの自作の経験ではそうでした。ところが実際にバイポーラーTrのパワーアンプの後にFETパワーアンプを入念に検討し比較してみたら、ほとんど音質差がありませんでした。ですのでFET出力段のパワーンプの販売は止めました。同じ音質なのに品種を増やしても混乱するだけですので。パワーアンプに関しては他にもいろいろ検討していますが、なかなか現状より大幅に向上するということがありません。

以上今回はパワーンプ出力段のお話でした。

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9月 06 2011

あなたのスピーカー何cm?の続き −シミュレーションで考える−

前編ではスピーカーの周波数特性について実測特性を元に壁からの反射による影響を 調べてみました。今回は周波数特性にどの壁がどのくらい影響を与えているのか考察してみたしと思います。

壁からの反射の影響を計算するソフトにstndwave2という便利なフリーソフトがあります。通常現実に得られた周波数特性があまりに複雑でシミュレーションで再現させることは非常に難しいのですが、今回なんとか似たようなシミュレーション結果が得られました。

stndwave2というソフトは定在波解析ソフトの様な名称をしていますが、実際には鏡像を使用した干渉効果のシミュレーターだと思います(その多重干渉の結果が定在波効果です)。またこのシュミレーターでは反射率の周波数特性依存性とスピーカーの指向性、音の回折効果は考慮されていないと思います。ですのでそのへんを念頭においてシミュレーションする必要があります。

まず距離3mで測定したJBL4429の周波数特性を再度掲載します。
4429-room.jpg現在の事務所での周波数特性(JBL4429、Lch、3m)
またシミュレーションで求めた周波数特性がこちらです。

sim-1.jpg周波数特性のシミュレーション結果(20Hz-500Hz)

多少のズレはありますが、かなり雰囲気が出ていると思います。60-70Hzの谷、150Hz近辺の比較的広い谷、42Hzのピーク、最低域の40Hz近辺が中域に比べて10dB程度上昇する等がほぼ再現されています。

シミュレーションの条件に興味がある方ははこちらの図をクリックして下さい。

sim-1r2.jpgシミュレーション条件は左の図をクリック

シミュレーションの条件でポイントがあるとするとスピーカー背面壁(シミュレーターでは「前面」と表記されている)との距離です。実際は35cmのところシミュレーションでは60cmにしています。実際にはウーハーから出た音波はバッフル面をたどってから後壁に到達するので、その分実測の距離よりも多めに設定しないと計算が合わないようです。
ちなみに現在の事務所のレイアウトはこんな感じです。

layoutnew.jpg現在の事務所のレイアウト(事務所の1辺が8.4m)

さて、およそシミュレーションで周波数特性が再現できているとして、次に書く壁の影響を調べてみたいと思います。

計算時各壁の反射率はえいやで0.8程度にしてあります。 ここでひとつの壁だけの反射率を0.8程度にして他の壁の反射率を0にするとひとつの壁の影響を個別に知ることができます(これがシミュレーションの良い所)。
実際の周波数特性は振幅だけでなく位相も考慮しなければならないのですが、その辺はとりあえずここでは考えないことにします。
例えばスピーカー背面の壁だけの影響を計算した図がこちら。

sim-haimens.jpg スピーカー背面壁からの反射の影響

この結果から150Hz近辺の幅広の谷はスピーカー背面の壁の影響が大きいことがわかります。

次に天井の影響を見てみましょう。天井のみ反射があるとして計算した図がこちら。
sim-seals.jpg 天井からの反射の影響

やはり120Hz付近に大きな谷ができました。実測周波数特性に見えた150Hz近辺の広い谷は天井とSP後ろの壁のダブルパンチの影響だった様です。 150Hz近辺というのは聴感上低域の量感に影響する一番大事なところで、これを改善するには後ろ壁と天井との距離を何とかしなければいけないことがわかりました。

以外に影響が出なかったのが床からの反射の影響です。低域に影響は有りませんでした。ひょっとすると400Hzあたりの谷はこの影響かも知れません。よくスピーカーシステムのカタログに床の影響を避けるためにウーハーを高くしましたという文言が乗っていますが、床からウーハーを離すと直接波と反射波の距離差が大きくなって、かえって床の影響を強く受けるようになります。実際には天井の影響度が少なくなりましたということかも知れません。

sim-floors.jpg 床からの反射の影響

もう一つ大きいのは右側の壁の影響で180Hz、60Hzに谷ができます。
sim-rights.jpg右側の壁からの反射の影響

左壁の影響は距離が離れているため小さくなります。

sim-lefts.jpg 左の壁からの反射の影響

スピーカー対向面(リスナーの後ろ壁)の影響も距離が離れているため小さく出ます。
sim-backs.jpg スピーカー対向面の壁の影響

以上スピーカーシステムの周波数特性に与える影響を壁ごとに計算してみました。スピーカー背面と以外にも天井の影響が大きいことがわかりました。左右壁はスピーカーとの距離が1-2mだと大きな影響がでます。逆に周波数特性を平坦にするにはこれらの壁の影響を軽減する工夫が必要となります。

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8月 22 2011

あなたのスピーカー何cm? −トニー谷ではないけれど−

あなたのスピーカーの口径は何cmですか?

と聞かれたとします。この答えは簡単です。

16cmとか20cmとか18cmx2とか、いろいろだとは思いますが・・・・・。
ではこう聞かれたらどうでしょうか、

あなたのスピーカーは何cmのスピーカーとして機能していますか?

この答えは非常に難しいのです、なぜなら壁の影響があるからです。

反射壁1枚の影響を考慮するとスピーカーの鏡像ができるので、スピーカー1個のはずが2個あることと等価になります。 例えば20cmのスピ-カー+壁1枚で28cm(=√2・20)のスピーカーとして機能するとういことです。

ただし話はそれだけではすみません、さらにここで厄介なことに反射壁との距離と周波数の関係によって干渉して音圧が強くなったり弱くなったりするので、実際のスピーカーの等価口径(とここでは呼びます)は0-28cmの間で変化するということになります。

壁一枚の場合は計算も楽ですが実際の部屋には壁が6枚あるのですこぶる厄介で計算しても合わないのが普通です。

ただ、ややっこしいことは抜きにして実際の試聴環境でスピーカーが何cmとして機能しているかは実測で見当がつきます。スピーカーの無響室での音圧レベルは公表されているのでわかっていますし、マイクの感度もわかっているので、実際の試聴環境で音圧レベルを測って、その値が無響室に比較して3dB高ければ壁1枚分、9dB高ければ壁3枚分です(もちろん干渉の影響があるので周波数によって異なりますが)。

ということで、実際に調べてみましょう。

まずスピーカーJBL4429(Lch)から3mの距離で周波数特性を測定します。その結果がこちらです。

4429-roomfin.jpgJBL4429(L)の3mでの周波数特性

(以前の4429の周波数特性と少し異なり低音域が結構持ち上がっています。最近レイアウト変更をして、SPの対向壁に積んでいた1mの奥行きの段ボールがなくなったことと、測定距離が4mから3mなったせいでしょう。)
次に周波数160Hzあたりが周波数特性がフラットなのでここを基準にします。160Hzを2.83V(1W8Ω)でスピーカーに入力した状態で、その際の3m位置での絶対音圧を求めます。

最初測定用マイクEC-8000の感度-60dBから計算したのですが、全く計算が合わなかったので、別途騒音計を購入して絶対音圧を求めました。その結果160Hzの音圧レベルは81dBであることがわかりました。

4429の3mの距離での無響室ので音圧は計算上83.5dBとなります。すなわち上図の緑線で示した160Hzの2.5dB上のレベルが(無響室上における本来の)音圧レベルです。これを基準に3dBおきに-6dBから0dBに赤線、0-12dBまで青線を引きました。この線1個の間隔がすなわち壁1枚分による音圧上昇(下降)になります。

低音域を除けば平均的には+0-6dBあたりで、壁0-2枚分音圧が大きくなっている計算になります。壁は床、天井も含めれば反射壁は6枚あるのですが、壁の影響というのは+-あるので結果的にほぼ+-0になるのと、高音域では指向性が強いために意外と壁による音圧増加は少ないと考えてよいでしょう。

音圧が+6dBとするとスピーカーの口径は2倍(面積が4倍ということなので)ということになります。スピーカーの口径が30cmだったら60cmスピーカーとして機能しているということになります。

120Hz以下の低音域では+9dB位で、SPの口径が約3倍になっていることになります。30cmが90cmとして機能しているということになります。反対に160Hz近辺では-2.5dBくらいのレベルで約0.7倍の口径の20cmのスピーカーとして機能していることになります。

こちらの環境では現在4429を後壁にくっつけているのでこの程度で済んでいますが、普通に壁から離して設置すると干渉の影響でもっと極端に低域に谷ができてしまいます。

低域で+9dBレベルになっているということは低域ではスピーカーからの直接音は10%程度で残り90%(ほとんど)は壁からの反射音ということになります。従ってしまった低音を出すにはスピーカーやアンプのDFに気を使うだけでなく、壁の剛性を改善したほうが10倍効果があるといえます。

それともう一つ、結果的に低音域にのみ音圧上昇が起きるので、3mの距離で聞くと低音が持ちあげられた音になります。ナチュラルイコライジング効果とでも言えばいいでしょうか。 当然スピーカーに近づくとこの効果は減少します。例えばスピーカーからの距離が1.5mとかですと低音域が下がってうるさい音に聞こえがちだと思います。大体海外製のスピーカー等は至近距離で聞くことを想定していないのではないかと思います。現実問題として難しいかも知れませんがなるべくスピーカーからの距離を取ってナチュラルイコライジング効果を利用したほうがバランスが取れると思っています。

弊社に試聴に来る方でもわざとスピーカーに近づいて聞こうとする方が多いのですが 、スピーカーに近づいて帯域のバランスが取れるシステムを組もうとすると逆にかなり癖のあるアンプ類を揃えることになってしまうと思います。
以上頭に入れておくと役に立つかも知れない実験と考察でした。

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7月 26 2011

アンプの電源アースの取り方 -アースを取るとアスなのだ-

はじめに
以前のコラムで、オーディオ的には電源のアースは接続しない方がいいということを述べました。アンプの測定などをした経験があれば当たり前の(様にやっている)ことなのですが、そうはいっても普通は測定などしないでしょうから「意味がわからん」という方も多かったかもしれません。

(実はいまだにACコードのことを何度も質問されるので困っています。「ACコードはどれがいいか」みたいな質問はそういう事をやっている方に直接聞いてください。)

今回眼に見える形でアースを取るとどうなるかお見せしたいと思います。

ACコードはどれがいいかを考える前にまずアースの取り方(アースを接続しない方法も含めて)を考えたほうがいいですと何度も言ってきましたが、それはこういうことでした、ということでご理解いただければ幸いです。

実験方法

被測定アンプには市販品を使用しました。本当は弊社のアンプを使用したほうがアンプ本体のノイズレベルが低いのでノイズ解析には有利なのですが、弊社製品特有の問題と誤解されると困るので。

測定に使用したアンプはプリメインアンプ(実売価格10万円前後)約5年前に購入したものですが、これは非常によく出来ています。このアンプはセパレート型としても使用できるのでプリアンプ部分を使用して、CD入力端子をショートし、CD入力を選択した状態でプリアンプ出力(ノイズレベル)をオーディオアナライザー(VP-7723A)で測定しました。

ボリュームの位置はMAXにしてあります。

電源ケーブルは3Pの電源タップをアンプ近くまで持ってきておき、アンプから電源タップにACコードを接続します。この際アース線を電源タップのアースに接続した場合とあえて接続しない場合でノイズレベルを比較しました。

測定結果

(1)ノイズレベル

トーンコントロール無し(スルー)

アース/フィルター IHF-A 80KHz フィルター無し
アース接続無し 3.7uV 10.1uV 23uV
アース接続有り 12.1uV 29.6uV 63.8uV

ノイズレベルの測定結果が上表のとおりです。このアンプはトーンコントロールをスルー出来るようになっているのでTC無しで測定してみました。(TCを入れると全体のノイズレベルが上がってしまいます)

測定器のフィルターをIHF-Aと80KHzそれとフィルター無し(測定器の帯域は数百KHz程度)の3種で測定してみました。
ご覧のようにアース線を接続するとノイズレベルが3倍に増加していることがわかります。
トーンコントロール有り

アース/フィルター IHF-A 80KHz フィルター無し
出力ノイズ 11.8uV 29.5uV 64.3uV
最大出力 12.1uV 37.1uV 100.6uV

トーンコントロールをいれた状態で測定するとフィルターをかけた状態では差が少ないのですが(元々のノイズレベルが大きいのでマスクされる)、測定器のフィルター無しで測定するとノイズレベルは100uVに達しています。

測定してわかりましたが、このアンプはACインレットのアース部がシャーシにアースされていませんでした。これにはビックリです(PSE法違反では?)。このメーカーのCDプレーヤもアースがシャーシに落ちていませんでした。音質上わざとやっているのかも知れませんが、これは安全上からもやってはいけないことではないでしょうか?測定時はプリメインアンプの背面にあるアース端子にアース線を接続して測定しました。

(2)信号波形

それでは次にノイズの波形を見てみることにしましょう。下の写真はアース線の接続の有り無し時の出力ノイズの波形をアナログオシロスコープで見たものです。デジタルオシロで測定すると測定系のノイズで何を見ているかわからなくなるので、あえてアナログオシロで見てみました。

無信号時の出力信号波形(アース無し)無信号時の出力信号波形(アース有り)

アース線接続無し                    アース線接続あり

横軸10ms/div 縦軸2mV/div(目視では波形が繋がっているように見えますが、写真だと波形が途切れるようです)

アース線を接続していない場合は特に目立ったノイズはありません。アース線を接続すると50Hz周期のハム成分と高周波成分(基線が太い分)が重畳していることがわかります。この様にアンプにアース線を接続しない方が基本的にはいいのです。弊社のアンプにはアース線が接続されないACコードを付属させていますが、わざわざ他の3PのACコードを使用してノイズを増やすことはお薦めしません。もっとも他の機器の電源ケーブルでアース線が接続されている場合には、一箇所だけアース線を接続しない様にしても意味がありませんが・・・。
横軸・縦軸拡大波形
無信号時の出力信号波形(アース無し)横軸拡大無信号時の出力信号波形(アース有り)横軸拡大

アース線接続無し                   アース線接続あり

横軸20us/div 縦軸2mV/div

横軸を拡大するとこのようになります。アース線を接続した方は1.6MHzの高周波成分が重畳していたことがわかります。電源のアースにはより高周波の成分(数十MHz)もありますが、プリアンプの帯域に制限されてこの周波数が検出されているのだと思います。

1.6MHzなら聞こえないから問題ないと思われるかも知れませんが、この高周波に振幅変調がかかれば後段のアンプあるいはスピーカー(LPFとして働く)を通過後に可聴帯域の信号に変換されます(AMラジオと同じ原理)。また高周波成分に周波数変調がかかればやはり可聴帯域に落ちてきます(FMラジオの原理) 。というわけで高周波といえども油断してはいけません。

測定環境は住宅地のマンションですが、オフィス街のビルなどのコンセントのアースはこれよりはるかに汚れていると考えられます。しかも場合によっては後段のアンプで10倍ずつ増幅されていくので益々始末に悪いのです。環境によっては数Vレベルに達していても不思議はありません。

測定当初デジタルオシロを使用しようとして、デジタルオシロ(USB接続)本体をアンプの上に置いたら、こんなノイズ波形が出てきました。10mVレベルトーンバースト波形のように激しく振れています。本体をアンプから10cm離したら無くなりましたが、デジタル機器はノイズ源でもあるので油断してはいけません。
おまけの1枚
usb320.jpg

USB機器(デジタルオシロ)をラップトップPCに接続し、アンプの上に置いたときのアンプの出力波形

おわりに

以上、アース線の接続の有無とアンプのノイズの関係を見てみました。ACコードに凝る前にアース線の接続の有無による変化を調べた方がはるかに大きく効くと思います。また電源ケーブル回りを整える際も何か電気的な指標を持って調べていかないと何をやっているかわからなくなってしまうと思います。ちょっとした電源ケーブルの値段でオシロとAC電圧計が買えますので、凝りたい人はこの辺から凝ってみてはいかがでしょうか。

(アースを取らないというのはあくまで自己責任でお願いします。FMチュナーなどはアンテナを接続する関係で必ずアースを取るようにと取説に書かれているのでその指示に従ってください)

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5月 23 2011

さかな君もびっくり、「ギョギョ」っと驚くヘッドホンの聴感・周波数特性

はじめに
ヘッドホンの周波数特性は通常耳の特性を模した人工耳にマイクを装着しヘッドホンを付けて測定するのが普通です。ただこの方法ですと発生した内耳・外耳の形によって発生する高域での周波数特性の暴れがなどが、実際に個人のものと同一である保証はありません。高域のピークは結構派手に測定されるので、本当の所はどうなっているのか気になるところです。高域ばかりではなく低域もどのくらい伸びているのか、そのレベルはどうかなど(低域は肌の弾性によって低下するので当然個人差がある)、通常のダミーヘッドによる測定では必ずしも十分ではありません。

そこで実際の聴感上の周波数特性を自分の耳で測ってみました。スピーカーなどですと部屋の壁などからの反射の影響で周波数特性が激しく乱れるので、マイクと測定器を使用しなければ測定できませんが(それにマイクを使用して測れば、ヘッドホンと違ってなんの問題もないので)、ヘッドホンの場合は周波数特性が比較的スムーズなので各周波数ごとに音量を記録していけば、結構な精度で測れるのではないかと思ったからでした。

測定方法
測定方法を以下に示します。

ヘッドホンの周波数特性測定方法ヘッドホンの周波数特性を自分の耳で測定する方法

発振器を2つ用意しました。ひとつは基準音として1Khzの信号をずっと出し続けます。もう一つで20-20KHzの信号を入れて、ヘッドホンアンプで信号を切り替えながら同時にヘッドホンアンプのアッテネーターを調節して2つの信号音の音量が同じになる減衰量を記録して周波数特性を算出しました。この方法ですと実際に自分の耳で聞こえる音量で判断しているので、間違いなく自分にとって正しい周波数特性となります。

ヘッドホンアンプのアッテネーターはこのように1dBステップで20dB可変できる機構(外側ツマミ)と0〜-54dBまで可変できる機構(内側つまみ)があるのですが、実際には外側のツマミ(1dBステップで20dB可変できる)とフラットアンプ(15dB)の有無(スイッチで入れたりスルーしたりできる)を組み合わせて行いました。また測定前にあらかじめ全体域をスイープして特にピーク、ディップがある周波数近辺は詳細に調べました。
ヘッドホンアンプに搭載した新型アッテネーターの写真ヘッドホンアンプに搭載したアッテネーター

測定結果

それではお待ちかねの測定結果です。まずはゼンハイザーから
(1)ゼンハイザーHD-595

hd-595-480.jpgゼンハイザーのHD-595の聴感周波数特性(低域の伸びが素晴らしい)

このヘッドホンは非常に帯域のバランスが良くきこえます。高域にこれだけ派手なピークがあってもバランスがいいのは6KHz以上で落ちていっているのと、低域がとにかく30Hzまでフラっトに伸びているので、非常に力強さを感じられるからかも知れません。また8KHzに音がほとんど聞こえなくなる領域がありました。

(2)ソニーMDR-Z1000
次はソニーです。ごめんなさい。

ソニーファンの方は見ないほうがいいかも知れません(閲覧注意)。
z1000-480.jpgソニーのMDR-Z1000の聴感周波数特性(けっこうかまぼこ)

ゼンハイザーに比べるとフラットに見えますが、結構低域、高域とも早く切れます。かまぼこっていうんですか。ゼンハイザーほどではありませんが1KHz以上の高域のレベルが高めです。このヘッドホンは聴感上はかなり高域に寄っているように私には聞こえますが、それはこの辺から着ているのではないかと思います。このヘッドホンは歯切れの良さは抜群にいいのですが、低域が比較的早くから切れているこのとの影響もあるのかもしません。

(3)AKG K-702

AKGのこのヘッドホンの特性は見事です。ほぼフラットで帯域も広いです。ほとんどピークはありません。低域は超低域は落ちていますが、50Hzまではほぼフラっとに出ています。高域も一番伸びています。13Khz位までなんとか聞こえます。このヘッドホンのカタログにダイアフラムを2層に分割したバリモーションシステムを導入したとありましたが、そういったことをしないと、なかなかここまで伸びないのでしょうね。ヘッドホンの振動板は通常40mmΦ位ありますし、それが仮に分割振動なしに駆動できたとしても耳に達する距離が振動板位置で異なるので打ち消し合ってしまいますから。AKGは非常に繊細な音が得意なので中高音域が多少持ち上がっているのかと思ったら、3種の中で最もフラットで優秀な周波数特性でした。素晴らしいです。きっと相当な技術力とノウハウがあるのでしょう。これにゼンハイザーの様なフラットな低域が実現されたらさらに素晴らしいのではないかと思います。このヘッドホンは開放型ですが、密閉型のモデルは低域がもっと伸びているかも知れません。
k702-480.jpgAKG-K702の聴感周波数特性(フラットで帯域も広く申し分ない特性)
おわりに

ヘッドホンの聴感周波数特性を測定してみました。意外ときれいに測定できました。またヘッドホンの特徴もよく出ていると思いました。もちろん、ヘッドホンの音質は周波数特性だけで決まるものではなく、他にも音質に影響する数々の要因があると思います。またヘッドホンを愛用されている方は皆さん特に高域を欲しがる方が多いのですが、ひょっとするとヘッドホンの超高域が実際にはあまり出ていないので、アンプなどに多少キンキンしたものと求めているのかも知れないなーと思いました。今回紹介した周波数特性の測定は測定器がなくても、パソコンなどで工夫すれば測定出来ると思いますので、興味のある方はご自身で一度お試しになってはいかがでしょうか?

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2月 15 2011

CDプレーヤーの音質と特性(4)…..家政婦は分析した、の続き…

はじめに
前回は数十MHz帯の高周波ノイズを見てもらいました。この辺はマスタークロック、ビットクロック、さらにはデータから漏れて来たノイズだと思います。ノイズにはこの辺の高周波の他に、100KHzくらいの可聴帯域の少し上にもノイズが発生しています。ここでは100KHz帯域のノイズを見ていきましょう。

測定方法
測定方法1KHzのサイン波(-15dB)を再生し、デジタルオシロのFFTスペクトルを観察しました。前回の「CDプレーヤーの音質と特性(4)」では数十MHz帯の高周波ノイズを見ましたが、この辺はクロックあたりの漏れと考えられます。ここでみている250KHz帯のノイズは、信号処理過程で出た副次的な成分で、本来フィルターで取り除かれているべきものと考えられます。
可聴帯域外ノイズスペクトル一覧

1. CDP−555ESD

特に馬鹿でかいピークはないのですが、100-250KHz帯に小さなピークがたくさんあります。またベースライン(基底)も全体的にやや高めです。
555-Di1KHzSignFFT-250Khz-400
2. 50万円のCDP

このプレーヤーは 165KHzと225KHzにはっきりしたピークがあります。
SA1-Di-1KHzSinFFT250-400
3. DV-600AV

ピークはないのですが100KHzを越えたあたりからややこんもり盛り上がっています。高域が濁ってい聴こえることと関係している様に思います。
AV600-Di-1KHzSignFFT250KHz-400
4. DAC-FA0

特にピークは見当たりません。また高域でもベースラインが低く抑えられておりいい特性です。
FA0-1KHSignFFT-250KHz-400
以上が比較的低い帯域の高周波ノイズでした。結構出ているものです。この辺のノイズスペクトルと音質にはやはり相関があって、ノイズが多いほどうるさい音になっています。また前回説明した数十MHzの高周波ノイズと(あるないという意味では)相関はありますが、機種によってはノイズの有無が帯域によって異なっています。

いずれにしても可聴帯域外のノイズは無い方がもちろん良いのです。この辺のノイズが多いと中高音がうるさく、何か付帯音が付いた様な音質になります。その傾向はアンプ・スピーカーなどを良くすればするほどはっきりわかるようになるので(気になってくるので)始末に悪いのです。

弊社のDAC-FA0はこの辺のノイズ対策を入念に行っています(たまたまノイズが無いのでは有りません)。

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12月 16 2010

CDプレーヤーの音質と特性(3)…..家政婦は分析した…

CDプレーヤーが発生する高周波ノイズについて、音質への影響を述べましたが、ここではさらに高周波ノイズについてさらに詳しく説明します。

一般にCDプレーヤーあるいはDACが発生する高周波ノイズは2種類あります。一つは100KHz近辺のノイズ、もう一つは数十MHz帯のノイズです。まづここでは数十MHz帯の高周波ノイズについてみてみましょう。

これから紹介する高周波ノイズはCDPをPAUSEにした状態で測定したノイズスペクトルです。測定に使用したのはデジタルオシロで、デジタルオシロ上でFFTスペクトルを計算しました。

また以下の図で横軸は0-50MHz、縦軸は-110dBから50dBです。
555-di-pausefft400.jpgCDP−555ESDの高周波ノイズ(全体にまんべんなく出ている、凄い)

SA1-pause50万円のCDPの高周波ノイズ(強烈なピークがあります)

AV600pauseDV-600AVの高周波ノイズ(比較的少なめですがピークあり)

fa0pausefft2-400.jpg DAC-FA0の高周波ノイズ(目だったピークはありません。FA0の測定時期が異なるせいか、線の見え方が異なりますが条件は同じ(はず))
以上の図を比較していただくと、機種間でかなりの差があることがわかります。またスペクトルの特徴として全体のベースライン(基底線)が機種によって異な るほか、特定の周波数でピークのあるものもあります。18MHzと36MHzあたりにピークがあるものが多いようです。また弊社のDACは高周波ノイズが 非常に少ないことがわかります。

ちなみに 一番凄いノイズを発生するCDP−555ESDでも前に紹介したパッシブLPFを通すとこうなります。
555-lpf-pausefft400.jpg CDP−555ESD+パッシブLPFの高周波ノイズ(ノイズがほとんど取れている)

もうノイズはほとんど取れています。
高周波ノイズはもちろん直接聴こえませんが、これだけ高い周波数ですと機器内を飛び回りますし、信号ケーブル、さらに電源ケーブルを通じても伝播している可能性もあります。この様なもともとの信号に無い高周波信号はそもそも制御されたものではないので、その振幅、周波数も変動しやすいわけです。例えば50MHzの高周波信号に例えば0.01%周波数変動(5KHZ)が生じると5KHZの信号として聴こえてしまう可能性もあります(ヘトロダイン効果といいます)。

ですので高周波だから放置して良いというわけではなく、DACの微妙な音のニュアンスにはこの辺も影響していると考えているのです。
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12月 02 2010

CDプレーヤーの音質と特性(2)…..家政婦は考えた…

前回、さまざまなCDPの信号波形を見てもらいましたがさらに考察してみましょう。

(1)高周波ノイズは音質に影響を与えるか?
まずこれを調べてみましょう。調べるには高周波を除去して音を聞いてみるのが手っ取り早いでしょう。

そこで作ってみたのがこれ、パッシブフィルターです。
pfiltercir.bmp

カットオフ28KHz、バターワース型3次ローパスフィルター

実際のフィルターの写真はこれ

lpf320.jpg

フィルターインピーダンスは3KΩとして設計しました。

このフィルターを通すと、ソニーの名器CDP-555ESDの信号波形(1KHz、-15dB)、

これが
555-di1khzsign.jpg

あら不思議(不思議でもなんでもないが)、こうなります。
555-lpf-1khzsign.jpg

肝心の音質ですが、このフィルターをCDPの後(プリの前)に入れるとソニーのCDP-555ESDにあったデジタルくさい音の硬さがほとんど取れます。その音は現在でも最高級品として聴けるほどです。音は全体におとなしくなり、欲をいえばもっと高解像になってもいいかなという感じです。もう何十年も経っているので音が多少引っ込んで聞こえるのはしょうがないと思います(アンプでもそうですから)。

このフィルターは現代の50万円のCDPにも効果があります。入れてみるとうるささの3割くらいは改善されます。この場合はなぜかまだうるささというか、付帯音のようなものは完全には払拭されません。一度内部で発振している様な状態だと、後からフィルターをかけても可聴帯域まで侵食されたものは元に戻らないのかもしれません。ソニーのCDPで劇的に効果があったのは、それだけひどい高周波が乗っていたから?・・・・。すべてのつじつまが合うわけではないのですが、デジタルはそういうものなのでご容赦下さい。

またなぜかわからないのですが(ちょっとは思い当たる節もあるのですが)、エソテリックのX-30にはほとんど効果がありませんでした。
このパッシブフィルターを使用する際の欠点は音量が半分になってしまうことです。フィルター有り無しで比較するときに、同時に音量も調節する必要が有ります。

ついでですが、CDが出始めの頃よく信号系統に1:1のアイソレーショントランスを入れて音質が改善したなんて話がよくありましたが、それは現代でも通じる話という事になってしまいます。

またDACの最終段に真空管バッファを付けて音が良くなったという例は現代でも多いようですが、それもこの高周波の影響と考えることができます(真空管を使用すると自動的に数十KHzのローパスいフィルターになりますので)。

さらに拡張すると、こういう高周波ノイズはどこでも伝播しやすいので、電源ケーブルを通じて伝播したり、はたまたCDPやアンプケースが信号すると高周波がケースの浮遊容量による変調のされ方が変わるので、ケースの剛性を上げたら音が良くなったとか、さまざまな不思議のヒントになる、といったらいいすぎでしょうか?
(2)高周波ノイズが発見されにくい理由

これだけ高周波ノイズが発生していれば普通わかるでしょう、と思われるかもしれませんが、結構そうでもないのです。一般に高周波ノイズを発見しやすいのはアナログオシロですが(帯域も広いので)、高周波ノイズのレベルが比較的低いので、輝線(波形の線)が少し太くなるだけです。アナログオシロにはCRTの焼きつきが禁物なので線が太くなると直ぐに輝度を落として波形の線を細くするのが常識なのです。なので高周波が重畳しているかどうかは、そう思って見ないと発見できないのです。

加えて、DAC部の発振は比較的低レベル(-40-50dB)でかつ安定的に発振しているので、なおさら見つけにくいのです。アンプなどが発振する場合は非常に不安定でしかもピーとかギャーとか言うので比較的簡単に見つかるのですが、DACは静かに安定に発振するのであると思って見ないと見つかりません。

デジタルオシロを使えば見つけやすいといえばそうですが、デジタルオシロはもともとノイズレベルが高いですし、分解能もせいぜい10bit位しかないのでこの場合も結構見つけにくいのです。

まあ高周波ノイズが出ている事はこれまでにも結構言われていた事はあるのですが、定量的に示した例はほとんど見つかりませんでした。
(3)発振はかなり一般的です

DAC部の発振は特異な例かというとそうではないと思います。あるメジャーなDACチップメーカーの使用例の通りに作るとまず間違いなく発振すると思います。高周波のパスコン、ベタアースなど指定されている基本事項はすべて守っても、私が作った数例ではすべて発振していました。これはDACチップが悪いわけではなく、また参考回路が悪いわけでは有りません。基板設計、回路設計をする人は十分な発振防止対策をする(実力がある)という前提で参考回路が掲載されているのだと思います。
(4)アースだけでも伝播します

パッシブフィルターで高周波ノイズが取れましたと言いましたが、ひどいときにはフィルターを入れてもだめで、何をやっても取れないときもありました。 通常、信号というのは2本の線がつながって初めて伝播するのですが(低周波では)、高周波になるとアースがつながっているだけで伝播していきますから、かなりたちが悪いのです。ひどいときはアースがつながっていなくとも空中を飛んでいきますから。DAコンバーターによくマスタークロックの入力ができるものがありますが、いくらシールド線を使って内部に導いたとしても、基板の接続部あたりから周囲に飛び回っている可能性もあります。マスタークロックは10MHzでも矩形波なので3次,5次,7次,・・・(30MHz,50MHz,70MHz・・・)の成分も乗っていますから、電波となってよく飛ぶでしょう。精度の良いマスタークロックを導入したつもりが、実は中で高周波を飛ばしただけだったなんて話もありえないわけでもないのです。マスタークロックは必要だとしても、基板上の占有面積を最小にして、かつ周りをベタアース+パスコンでガードすることがもっとも重要だと思います。

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10月 29 2010

CDプレーヤーの音質と特性(1)…..家政婦は見てしまった…

最近DAコンバーターをようやく製品化しました。DAコンバータ(あるいはCDプレーヤー)の音質にはどの様な特性が影響しているのでしょうか?オーディオデザインなりのDAコンバーターに対する考え方を紹介したいと思います。

まず最初に所有しているCDプレーヤー(CDP)の基本特性について紹介します。

一般にCDプレーヤーあるいはDAコンバーターの基本特性を見ても面白くないですよね、皆同じ様なものですから。私が最も音質に強い相関があると思っているのは、実は高周波ノイズです。今回は私が考えるCDPの音質の肝、その辺を紹介することになります。

高周波ノイズはオーディオ帯域の信号を再生し、デジタルオシロで見ると観測できます。無線と実験誌が行っているのは0dBの信号観測ですが、それでは見えません。今回-15dBの1Khzのサイン波形を再生しデジタルオシロ(200MHz)で観測した波形を紹介します。(波形の線の太さに着目してくださいね)

CDプレーヤー 信号波形 音質評価
CDP-555ESD

(ソニー)

555-Di1KHzSign ソニーがオーディオに力を入れていた頃(20年前?)のすごいCDPです。15万円で当時の最高峰でした。私がオーディオに興味を持っていた末期に購入したものです。このCDPは(当時のCDPとしては皆そうなのですが)いわゆるデジタルくさい音がします。硬いというか高音がきついというか、ぷつぷつした音というかそんな感じです。ただ低音の剛性感というかゴリゴリした音がして非常に気持ちいい部分もあります。波形は凄いですね、高周波ノイズがこれだけ乗っているのは珍しいです。もっともこの波形を見たので高周波ノイズが乗っていると気づいたのですが。
この中高音のデジタルくさい音はLPFを入れると見事に取れます(波形はAV-600並みになります)。そうすると、すばらしい音になります。
ただ残念な事は何しろ年数が経っているのでCDの1割位はトレースしなくなっている事です。
X-30

(エソテリック)

X30-1KSign320 エソテリックの波形は悪くありません。音質は力強くやはり低音がゴリゴリ気持ちいいです。ただこのCDPは高音が結構強く聴こえます。決して耳障りではないのですが例えていうならトーンコントロールでトレブルを2,3dB上げた感じに聴こえます。なのでシステム全体のバランスによって合う場合と合わない場合があるかもしれません。1KHzの波形には癖はないのですが、10KHzの波形が結構すごい事になっています。
DV-600AV

(パイオニア)

AV600-Sign1KHZ 有名なパイオニアのDVDプレーヤーです。恐ろしく綺麗な波形です。内部構成は何の変哲もないミドルクラスのDACチップ(PCM1742と4580OPアンプ)を使用した回路です。このDVDPの音質は帯域バランスがすばらしいです。低音が非常にもりもり聞こえ、まるで良質のアナログレコードを再生した様なバランスです。JAZZなんかは聴いていて気持ちいいです。高音は分解能が無いので音が団子になっているというか、濁るという感じです。(だから低音が良く聴こえるのかもしれません)SACDも再生できるのですが、これはおまけです。濁ってしまってまるでカセットテープの様な音質です。SACDはおまけですね。

50万円CDP

(国産)

SA1-Di-1KHzSin 数年前までxxグランプリとかで常に1位だったCDPです。購入当時はいいと思って使用していましたが、次第に中高音に独特の付帯音(キーンとかカーンとか)が付いているようで気になって仕方がなくなりました。よく言えば余計に響きが付くので、これを綺麗な音がするという人もいると思います。チョイ聴きでは受けるでしょう。ボーカルでは子音・サ行がきつく聴こえます(他の良質なCDPを聴かなければわからないのですが)
また低音が弱いですね。がーンと来ないです。
波形を見ると高周波ノイズが乗っていますね。パッシブのLPFを入れると高周波ノイズが とれ、付帯音の様なものも軽減されます。このCDPは重いです。いわゆるオーディオ界の定説みたいなものはてんこ盛りです。でもそれがまったく音質に効いてないって事ではないでしょうか?このCDP、ほぼ定価で購入しましたが、いい勉強になりました。
5万円CDP(国産) SA8400-Di-1KhzSign 安物のCDPです。ESD-555しか持っていないときにSACDを聞きたくて購入しました。音も安物です。波形は綺麗です、音も綺麗なのですが、なぜか感動できません。このCDPはDACチップのすぐ後(IVコンバーターの前)にパッシブのLCRフィルターを入れています。そうすると高周波ノイズは抑制できるかもしれませんが、周波数の高い領域でインピーダンスが上昇するのでDACが理想的な動作をしなくなってしまいます。回路的に気になる回路を使用していますね(悪い意味で)。

上記のCDPの中でそれぞれ特徴はありますが、ほぼ音質のいい順に並べています。ただしESD-555はパッシブLPFを入れるという条件付です。上の3つは特に順位が付くというものではなくそれぞれいいという感じでしょうか。下2つは、高い方は特に価格も考慮すると、とてもお勧めできるものではありません(持っている方ごめんなさい)。ただCDPの場合はいい、悪いといっても結構微妙な差ですから(SPほどは変わらないので)、その様に読み取ってください。

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