CDプレーヤーの音質差について

CDプレーヤーの購入動機

 最近CDプレーヤーを入れ換えました。これまで使用していたCDプレーヤーはソニーのCDP-555ESDというもので、まだソニーも音響製品に力を入れていた20年くらい昔のものです。価格は128000円くらいだったと思います。 記憶が正しければ当時の最高級モデルでパーツから何から相当凝ったものでした。 このCD、途中で中のベルトが外れてトレーが動かなくなることが何度かありましたが、それを自分で直した他はトラブルもなく動作しています。
 このCDの音質は非常に骨格がしっかりしたという感じの音で、(カートリッジで言えばDL-103のような感じです)悪くないのですが、唯一の気になる点は音が(特に中高音が)硬いことです。 昔CDが出始めた頃、よくデジタルくさいという表現が用いられましたが、まさにそういう音で、中高音がちょっと聴きづらいのです。 何しろ昔のものなので確かオーバーサンプリングさえ使っていないのですから、少々難があって当然かもしれません。ずっときになっておりさぞかし最近のCDPは音がいいのだろうなと想像していたのです。

 実は2年前にSACDも再生できるマランツのSA-8400というのを買ったのですが、音が薄っぺらく、音楽を聴いてあまり感動できないので結局使用しないでいました。

新しいCDプレーヤーの音質差

 今回は定評のあるDCD-SA1を購入しました。実際聴いてみてびっくりしました。音が良くなったことにではありません、音が期待したほど変わらなかった事にです。 価格も4倍ですし、50万円という定価から考えれば相当の物量を投入できるはずです(事実そうなっていると思います)。しかしその結果出てくる音がこの程度の差であるとすると、 はたして音質面から考えて、この価格差は妥当なのかと思ってしまいます。と同時にこのCDを絶賛しているオーディオ雑誌、業界は何なのだろうかと疑問を感じぜざるを得ません。 確かにDCD-SA1は555ESDと比較して、一番気になっていた音の硬さはありません、ただその他の点ではほとんど互角です。むしろ55ESDの方が低音がしっかりしていて聴いていて気持ちがいいこともあります。555ESDの方がスピーカーBOXの補強をしたような低音域のしっかり感があるのです。

CDメディアによる音質差

少し話は変わりますが、皆さんはCDをパソコンなどで一度良質のCD-Rに焼き付けると音がよくなるというのをご存知でしょうか? 太陽誘電の高音質デジタル録音用「美録」という金色のCDがあるのですが、これにパソコンでCDをコピーすると、オリジナルのCDより音が(特に高音が)よくなります。 高音がきれいになり、しかも高音のレベルが上がった(正常に戻った)様に聞こえるのです。

太陽誘電製 音楽専用CD-R
(今回の試聴にはこちらを使用しています)
太陽誘電製 音楽マスター用CD-R
)

 このCD−Rにコピーするという手法は結構音質を大きく変えるのです。そこで2台のCDPにオリジナルのCDとコピーしたCD−Rを入れてセレクターで二つのCDPの出力を瞬時切り替えを行い試聴比較すると下表のようになりました。
つまりCDP間の音質差というものはCDのメディア(実際には焼付け方法も含みますが)の音質差よりも小さかったのです。

CDプレーヤー 試聴CD
試聴結果
CDP-555ESD(ソニー) CD-RコピーCD ソニーのCDPで再生した方が高音がきれいに聞こえます
トータルでもソニーの方が好ましい音です
DCD-SA1(DENON) オリジナルCD
CDP-555ESD(ソニー) オリジナルCD デノンのCDPの方が当然音は全般的に良いです
DCD-SA1(DENON) CD-RコピーCD

むすび

デノンのCDPの音質は価格に見合っただけの向上がなかったので正直少しがっかりしました。と同時にオーディオ業界というものをつくづく考えさせられた体験でした。

CDとレコードの音について

アナログレコードの復活

 大昔はレコードを聞いていましたが、いつのまにか音楽ソースはCDになりました。第一今はレコードを特殊なものを除いて売っていませんので・・・。 ただ弊社の お客様の中にはレコードを聴かれる方も多く、大変ご要望も多かったのでフラットアンプをベースにイコライザアンプを開発しリリースしました。

今聞くレコードの音質

 イコライザアンプを発売するに当たり聴かずに出すわけにもいかず、 昔のレコードプレーヤーを引っ張り出し(プレーヤーの修理も依頼し)、カートリッジを購入し、音出しをするに到りました。 久しぶりに聞いて驚いたのですが、CDとレコードを聴き比べるとレコードの方がいい音がします。 具体的にはレコードの方が音の骨格がしっかりしていて、厚い音というのでしょうか中低音がしっかりしていて、ふくよかで(ぶよぶよしているという意味ではありません)聴いていて心地よいのです。 低音がしっかりしたピラミッド型の音とでもいうのでしょうか、とにかくいい音です。今聞くとなぜかレコード特有のノイズや歪感も以前より少なくなっている様に感じられます。

  ビニールの凹凸を拾うレコードからどうしてこれだけいい音が出るのか本当に不思議です。レコードを聴かれる方がいまだ多くいらっしゃる理由が良くわかりました。  対するCDはといいますと、確かに音はいいのですが、どうしても音の厚さのようなものがでにくく、ともすると薄っぺらい味気のない音になりがちです。 最近定番ともいえるデノンのDCD-SA1を購入しましたが、それでもこの傾向は同じです。このCDP、正直、雑誌などで絶賛されるほどにはいいとは感じられませんでした。 ただレコードは新版がほとんどありませんし、あってもCDの2倍近い価格です。また20分程度で終わってしまうので、一日中かけると操作も大変で、やはりメインのソースは依然としてCDです。

  次はDAC基板を作って、この辺も改良を試みたいと考えています。

アンプの過度応答特性

はじめに

 アンプの音質を左右する特性にも色々あると思いますが、「ここでは意外と知られていないのではないか」と思われる特性について解説します。まずは過度応答特性からお話します。

過度応答とアンプの音質の相関

アンプの製作の経験が豊富な方でしたらご存知の方も多いのですが、アンプの過度応答と音質には密接な関係があります。一般にアンプは高域の周波数特性が悪くなり始めるあたりの周波数でピークをもつのが普通です。この理由自体は明確ではありませんが、真空管アンプにしろ、半導体アンプにしろほとんどの場合結果的にそうなるのです。
 そこで通常はこのピークを無くし周波数特性を平坦にするために位相補正というものを行います。利得を設定しているNFBループの抵抗に数pFから数十pFの位相補正コンデンサを並列接続し、ピーク付近での利得を調整するわけです。通常トランジスタアンプですとこの周波数は数百KHzから数MHzになります。
 この位相補正、可聴帯域をはるかに越えた領域であるにもかかわらず、アンプの聴感上の音質に非常に大きな影響を及ぼします。位相補正を行っていないアンプ(超高域にピークのあるアンプ)はうるさいというかやかましいというか、音質が妙に硬く、また音量を上げると圧迫感のあるような音になります。同じアンプを位相補正すると、アンプのとげのようなものがとれ、しっとりとした感じになります。この差は微妙ではありますが、聴きなれると一度聴いただけで位相補正がしてあるかどうかがわかるようになります。
 オーディオフェアなどで聴いた百万円近いプリアンプで、音が妙にうるさく感じられるアンプが有りましたが、後でたまたまそのアンプの矩形波応答が雑誌にでていましたが、それはもうひどいピークが発生していました。
 またよくアンプを自作される方の中にはOPアンプやトランジスタを交換して、このデバイスの音は良いとか悪いとか比較されている方がいらっしゃいますが、その都度位相補正を適切に行わなければ、何を比較しているのかわからなくなってしまいます。
経験上、位相補正の有無の音質に与える影響は非常に大きく、抵抗やコンデンサなどの部品の音質差よりも大きいと思います。
そこでこの過度応答について、その測定方法と実測例について説明することにします。

過度応答特性の実測例

 過度応答特性(または矩形波応答と呼ばれていますが)とは、矩形波(方形波)を入力して、その出力波形をみる測定方法です。矩形波は基本波とその高次高調波成分をたくさん含んでいますので、矩形波応答を見るだけで高域の周波数特性を見ることができます。

つぎの表は実際のフラットアンプアンプ3種の過度応答の測定例です。上の緑色の線が入力波形で下の青色の線が出力波形です。アンプの(1)は基本波の100KHzに対して十分に周波数特性が伸びておりかつピークもない理想的な矩形波応答波形です。(2)のアンプは高域が比較的早く減衰しているため高調波が出力されないので三角波のような応答波形になっています。(3)のアンプは位相補正を行っていないために基本波の数十倍の周波数で4dB程度のピークがあるアンプです。矩形波応答にも高域のピークの影響が現れています。

  (1)広帯域アンプ (2)狭帯域アンプ (3)ピーク型アンプ
過度応答
周波数特性

この例に示したアンプの音質は最初に書いた経験則と一致しています。アンプ(1)が最も良い音質でその次がアンプ(2)です。アンプ(3)は少しうるさい音で、もっとも好ましくありません。アンプ(3)は雑誌掲載アンプのコピーで、決して悪い回路ではありませんし、部品は実は最も高価なものを使用しています。それにもかかわらず音質的に好ましい音にならないのは、位相補正の重要性を示しているともいえます。



オーディオアンプ用安定化電源の測定と解析

安定化電源/はじめに

アンプ用の電源はアンプの性能を左右する重要な要素の一つであると考えられます。電源によってアンプの音質が大きく変わるとも言われています。 またオーディオ関連の記事を見てみますと、安定化しない方が音質がいいとか、ツェナーダイオードによる無帰還形の簡易安定化電源の音質がいいとか諸説があるようです。ここではまず各種電源方式の諸特性を測定し、弊社安定化電源と比較してみたいと思います。さらに安定化電源を使う上での注意点にてついても触れてみたいと思います。

安定化電源/測定方法

電源インピーダンスの測定方法

安定化電源の最も重要な電気特性は内部インピーダンス特性であるといえるでしょう。ここでは電源の内部インピーダンスを測定してみたいと思います。以下に使用したインピーダンス測定回路を示します。測定原理はオーディオ雑誌などで紹介されているものと基本的に同じです。エミッタホロア型の電流増幅回路に発振器から信号を送り、安定化電源からの出力電流を変調します。その際の出力電圧変化を出力電流変化でわったものが電源の内部インピーダンスZ0になります。すなわち、

電源の内部インピーダンスZ0(Ω)=(ΔVcc/ΔVe)*500     (∵ I ≒ Ve/500)

になります。電源の内部インピーダンス測定時には変調信号に正弦波を用い、過度応答測定時には矩形波を用いて測定しました。


<安定化電源出力内部インピーダンス測定アダプター>
(実際の基板はさらに位相補正されています。 )

使用測定機器:
発振器:MXG-9816A(METEX) Max15MHz周波数カウンタ付き
オシロ:200MHzデジタルオシロ
2CH電子電圧計:VT-185(KENWOOD)

測定した電源回路

測定した電源回路は以下の4つです。弊社安定化電源基板(+35V部)、3端子レギュレーター(+15V),ツエナーダイオードによる安定化電源回路(+30V)、トランジスタによる差動誤差アンプ式(+35V)です。

安定化電源方式 DCP-REG3502 回路 備考
1.オーディオデザイン

DCP-REG3502
弊社安定化電源基板
誤差増幅器に高速OPアンプを使用したものでです。
2. 3端子レギュレーター 最も簡単な安定化電源
3. ツェナーダイオード+Tr ツェナーダイオードで出力電圧を固定するタイプ。トランジスタは出力電流を大きくする目的で挿入されています。
レギュレーション特性はダイオードの特性とコンデンサ、トランスなどで決まります。NEBをかけるタイプではないので音質が良いという人もいるようです。
4. Tr差動アンプ オーディオアンプの本に掲載されていた回路。誤差増幅器を使用するタイプとして、しばしば登場するものです。定数・使用部品はアンプの教科書に書かれている通りとしました。

安定化電源/測定結果

安定化電源の出力インピーダンス特性

各安定化電源の出力インピーダンス特性を周波数の関数として測定した結果を次に示します。横軸の周波数の単位はKHzであることに注意してください。すなわち左端が100Hz,右端が10MHzです。

弊社安定化電源が圧倒的に出力インピーダンスが低い(可聴帯域で20mΩ以下)ことがわかります。弊社の安定化電源は保護回路を搭載する前は6mΩでしたので、そのポテンシャルの高さがわかります。次に出力インピーダンスが低いのは4.のTR差動増幅タイプ(緑色)ですが、100KHz以上の高域でR0特性がうねっており、これは高域で共振現象が起きている事を示唆しています。この様な共振系が存在すると、次で見る過度特性が悪くなっており、聴感上も影響を及ぼすことが懸念されます。

3端子レギュレータとツェナーダイオードによる電源はR0特性が似ているのですが、10KHzから100KHz近辺で100mΩ、それ以下では0.5Ω位まで上昇しておりあまり低インピーダンスとはいえません。この様な周波数依存性は安定化性能は必ずしも高くなく、電解コンデンサのインピーダンスに特性が支配されているのではないかと思われます。またツェナーダイオードタイプのものは2-3MHzで強い共振を起こしており出力インピーダンスが非常に大きくなっていました。これだけ大きく共振するとアンプに接続した際もこの周波数帯域で不安定になる恐れがありますので注意が必要です。

これらの出力インピーダンス特性は安定化電源の回路形式だけで決定されるわけではなく、むしろその回路の熟成度、完成度によって特性が決まる面もあります。もちろん3のツェナーダイオードによる安定化電源のR0が極端に下がることはありませんが、簡単な回路だからといって安定であるとも限らないのです。したがって一部の方が主張する「誤差増幅器を使用した安定化電源は音質が悪い」という説は一般性のある話として展開するのは非常に乱暴といえます。

安定化電源の過度特性

各電源の過度特性測定結果を下表にまとめました。この測定結果は出力電流が急激に変化した場合に安定かどうかを調べるものです。出力インピーダンス特性を測定する際は正弦波を入力していましたが、矩形波を入力して波形を観測すれば過度特性を見ることができます。下表で下側の波形がVeの検出波形で出力電流(=Ve/500)に比例します。上側の波形が電源電圧Vccの変動分でR0(=(ΔVcc/ΔVe)*500)に比例します。すなわち、上側波形の矩形波の振幅が小さいほど出力インピーダンスが低いこと、また立下り、立ち上がりにおいてパルス性の出力が小さいほど安定な電源であることを示しています。今回の条件は6mAp-pの電流変化に対する電圧変動を調べていますので、かなり厳しい条件です。通常のプリアンプでの使用条件では例えば10KΩの入力インピーダンスを有するパワーアンプに対して2V程度の電圧を供給しますので、この場合1CHあたりたった0.2mAしか電流は変化しません。 ここでは加速試験として、その数十倍の電流変化を起こしていることに注意してデータを見てください。

上側波形:Vcc変動 10mV/div(=1.67Ω/div),  下側波形:Ve変動 1V/div(=2mA/div)
   (波形は断りのない限り10回のアベレージング波形)

被測定アンプ 100Hz 10KHz100KHz
1.オーディオデザイン
REG-3502
2. 3端子レギュレーター
3. ツェナーダイオード+Tr
4. Tr差動アンプ

オーディオデザイン安定化電源の過度特性

弊社電源は矩形波の入力に対して出力電圧が変動していないことがわかります。出力インピーダンスが非常に低いので実際の使用上では電圧が変動しないのです。ただ100KHzの入力に対しては若干のパルス上のノイズが出ていますが可聴帯域内はパルス状ノイズもほとんどありません。

3端子レギュレーター電源の過度特性

3端子レギュレータの波形はフラッシュさせて2通り表示させています。100Hzのそれは波形のアベレージングの有り無しで表示を切り替えています。通常10回を平均化して測定していますが、一見リップルのように見える残留ノイズがあったのでアベレージング無しでも測定してみました。アベレージング無しの場合、数KHzにピークをもつやや大きめのノイズがのっています。また100KHzのフラッシュ波形は、一つが通常時の波形、もう一つは大きなピークの出ている時の波形(なぜかは明らかではないのですが)です。一度だけこの様に大きな発振に近い症状を引き起こしたのですがその後この症状は再現しませんでしtあ。3端子レギュレータの内部回路は意外と複雑ですのでこの様な異常現象が出た場合(通常は異常と気づきませんが)対処の使用がありません。ただ全般的には簡単な割りに非常に特性が良いので利用価値はあります。

ツェナーダイオード+トランジスタ電源の過度特性

3のツェナーダイオードによる安定化電源は今回の安定化電源の中で唯一誤差増幅器を持たないタイプですが、やはり高域でスパイク状の電圧変動が出ています。また低域100Hzにおいては結構電圧も変動しています。このタイプの安定化電源は平滑コンデンサのインピーダンス、トランスの巻線抵抗、ツェナーダイオードの抵抗分(=ΔV/ΔI))の合成インピーダンスになると考えられます。電源のパーツを大きくすれば多少は改良されますが、他の方式に比較して所詮性能ではかないません。

差動トランジスタアンプ電源の過度特性

過度特性が最も悪いのが4.のトランジスタ差動アンプ式電源です。10KHzでもスパイク状のノイズが発生しています。安定化電源といえども誤差増幅器を有している場合ゲインを最大限に上げたアンプを内蔵しているわけですからしっかりと設計・製作しないとこの様な結果になってしまうのは当然です。実用上は問題ない(聴感上簡単にはわからない)と思いますがハイエンド用としては気になるところです。この回路自体が悪いというよりもアンプ電源の誤差増幅器をアンプとして見たときの詰め(特に高周波特性)が甘いとおもわれます。

電源の特性と聴感との相関について

上記各種電源をアンプに搭載して試聴するテストは行っておりません。ただ弊社のアンプに対するお客様の結果や自身の試聴経験からは共通して次の様な特長があります。

  1. 解像度が高い
  2. 音が生々しい
  3. 楽器の音の余韻がはっきりと聴こえる様になった
  4. ソースの歪だと思っていた音が歪まずに聴こえるようになった
  5. ホールの残響が良く聴こえるようになった
  6. シンバルの音に楽器の厚みが感じられる
  7. 低音が締まって聞こえる
  8. 歪み感がなくクリアーな音
  9. SNが良い

これらのいくつかは微妙なニュアンスが良く伝わるようになったという点で同じです。電源の貢献度も大きいものと考えています。

安定化電源/おわりに

安定化電源の出力インピーダンス特性、過度特性などを調べてきました。実際に様々なタイプの電源を調べてみると、その特性は定説としていわれている事項と必ずしも一致しないことがわかりました。電源も単に試聴テストにたよるのではなく特性測定と改良を積み重ねていくことが肝心といえます。また測定結果を通じて弊社安定化電源の高性能さがご理解いただければ幸いです。

アンプの実装状態での歪率をチェックしてみよう

一般にトランジスタアンプの高調波歪率は0.0x%から0.00x%程度で、音質には必ずしも影響しないと考えられていますが、実際には恐ろしいことが起こっています。アンプの実際の使用状態での歪率特性が1桁以上悪化していることがあるのです。

信号源インピーダンスの影響

実装状態でアンプ歪率に大きな影響を与えるのは信号源のインピーダンスです。下図を見てください。右側がプリアンプ左側がCDなどの信号源と考えていただければ結構です。信号源とプリアンプの間にはVRが入り、電気信号を分圧してプリアンプに入力します。分圧するだけならいいのですが、同時にVRの直列抵抗のために、等価的に信号源とアンプを接続するインピーダンスが上昇します。 例えば100KΩのVRを接続して半分の音量に絞った場合50KΩの抵抗が直列に接続されたことと同じになります。

この様な状態での歪率特性を調べるために、信号源に直列に抵抗を接続した状態で測定してみたのが次のグラフです。左がオーディオデザイン社のディスクリートアンプ、右側が代表的なOPアンプ5532の歪率特性を信号源インピーダンスを変えて調べたものです。

信号源インピーダンスが小さい場合(600Ω)には教科書に出て来る様な歪率特性です。高域においてディスクリートアンプの方が優れていることがわかります(もちろんディスクリートアンプであればすべて性能がいいという事ではありません)。しかしながらその差は少しでOPアンプでも十分実用に耐えると考えられます。

 ところが信号源インピーダンスが大きくなると(入力にVRを挿入し絞った場合に相当)、事情は一変します。Rs=4.7KΩの場合、OPアンプでは10KHzの歪率がかなり大きくなります。ディスクリートアンプでも若干10KHzが悪化しています。Rs=48KΩではさらに状況はひどくなります。OPアンプではなんと10KHzの歪率は0.1%に上昇します。これは明らかに音質に影響するでしょう。音が割れるまではいきませんが、高音域がきつく感じられ、全体的に堅い音になると思います。ディスクリートアンプではそこまで悪くなりませんが、やはり多少悪化しています。

 信号源インピーダンスが大きくなった場合に歪率が悪化する理由はアンプ初段のFET(Tr)の入力容量の非線形性によるものです。信号源インピーダンスが-側の入力インピーダンス(この場合1K//4.7K=825Ω)に等しい時に歪率が最も小さくなるといわれています。  信号源がCDでアンプがプリアンプの場合もそうですし、プリアンプが信号源でパワーアンプの入力部にVR(アテニュエーター)がついている場合にもこの状況はあてはまります。

 よくVRを入れると(音量を絞ると)音質が変わるという方がいますが、その原因はVRそのものの品質ではなく、実はこういったアンプ回路にかかわる問題であることも多いのではないでしょうか?(ほとんどの場合VRのせいにされていますが・・・)

 通常アンプの歪率特性はVRを最大にして測定するので、こういった影響は見えてきませんが、実用状態では必ずしも特性が良くない場合があるということに注意すべきでしょう。  また、この信号源インピーダンス依存性をなくす方法は別途紹介したいと思います。

アンプの歪成分のFFTスペクトル解析

はじめに

 アンプの性能を表す方法のひとつとして歪率特性があげられます。ここでは、通常議論される高調波歪率よりも一歩踏み込んた議論を紹介したいと思います。

測定方法

歪率の測定には、発信機と歪率計を内蔵したオーディオアナライザー(VP-7223A)を使用しています。測定条件にもよりますが残留歪率は0.0005%-0.001%です。歪率計には歪波形をモニターするための基本波除去後のモニター用出力端子がついていますので、この歪波形をFFTで解析して高調波歪の成分を調べてみました。FFT解析にはパソコンを使用し、現状最も高解像度、広帯域のサウンドボード(192KHz,24bit)を使用しました。周波数は約90KHzまで測定可能です。歪率計で基本波が100dB程度除去されていますので、FFT解析装置の解像度100dBと組み合わせて原理的には200dBくらいの分解能になります。ただし実際にはノイズなどの影響で170dBくらいがいいところでしょう。また注意していただきたいのは歪率系のモニター出力の絶対値は、勝手に内部でATTが動作するため当てになりません。歪率の絶対値はスペクトルからではなく、別に記した全高調波歪率を参考にしてください。あくまでFFTスペクトルは歪の周波数分布を見るために使用してください。一応測定されたFFTスペクトルのY軸はは、歪率系で測定された歪率の値にあわせて規格化しています。また、FFTスペクトルの縦軸はV・sでスペクトルのピークの値が直接歪率の絶対値を示すわけではありません。ですのでFFTスペクトルを見る際はあくまで相対的に比較して下さい。
測定条件は10KHz、1Vです。

アンプ歪率のFFT解析ブロック図

歪率のFFT解析結果

結果は下表の通りです。
横軸は周波数、縦軸は歪成分のスペクトルの大きさになります。AVアンプ、プリメインアンプで10KHzの基本波が除去し切れていないように見えますが、これはわずかなハム成分(50Hz)が乗った10.05Khzなどのスペクトルです。オーディオデザインのアンプはSNが良いのでこの成分がありません。

プリアンプの歪成分の周波数解析

アンプ 歪成分のFFTスペクトル コメント
AVアンプ
プリアンプ部
THD+N=0.011%
AVアンプの歪成分のFFTスペクトル ・3次高調波成分(30KHz)が最も大きな歪成分です。
・3次高調波の他に7.5次(75KHz)にも大きな歪成分がありますが、これは発信器の出力にわずかに含まれる歪がなぜか強調されているようです。
・他に40-60KHzに無数の非高調波の歪成分があります。
プリメインアンプ
プリアンプ部
THD+N=0.0054%
アンプの歪成分のFFTスペクトル 高調波歪の主成分は2次と3次成分ですが70-80KHz付近の歪も大きくなっています。
オーディオデザイン
プリアンプ
THD+N=0.0023%
アンプの歪成分のFFTスペクトル 基本的に目立った歪成分がありません。非常に優秀です。
歪成分が無いだけでなく、10KHz以上のベースライン(基底)部分も大きく減少しています。

FFT解析のまとめ

歪成分のFFT解析を行うことで、アンプの性能をより詳細に知ることが出来ました。また周波数特性の優れたオーディオデザインのアンプが結果的に歪率特性も非常に優れており、歪成分をほとんど発生していない事がわかりました。

アンプのSN比に関する解説

はじめに

 アンプの特性を示す性能の一つにSN比というものがあります。ノイズと信号の比を表しているわけですが、最近のトランジスタアンプにおいてはイコライザアンプやレコードのカートリッジ用のヘッドアンプを除けば、ノイズなど聴こえないのが当たり前ですので重要視していませんでした。ところが弊社のプリアンプを購入された方からよくアンプのSN比が良いといわれるので、調べてみると市販のアンプのSN比の表示には故意に良く見せかけているものや、電子工学的に考えて理解できないものがあることがわかりましたので、ここで少し解説してみたいと思います。本来トランジスタアンプにおいては(EQアンプヘッドアンプを除き)実用上問題にならないため、性能として議論する必要も無いのですが、逆にこの辺を理解しておくとカタログのスペックを見ればアンプの弱点やメーカーがどういう態度で接しているかが推測できます(誇大広告を見破ることができます)。

SN比の定義

SN比の定義そのものは簡単です。信号(S)とノイズ(N)の比を対数で表します。
・ SN比=20LOG(S/N)
SとNの単位はVoltです。対数は底が10になります。例えばSN比80dBで1万倍になります。ただ信号とノイズの設定値、測定法によって20-40dB位差が出てきますので、実際にはアンプの性能を表しているよりも、どれだけ良く見せたいか(良く見せなければいけないか)を表していることが多いのです。それでは実際に各種の測定法を見ていきましょう。

ノイズの測定方法

SN比の測定結果を議論するためにまず残留ノイズを測定します。ノイズの測定自体は簡単です。アンプの出力に電子電圧計をつなぐだけです。アンプ入力は通常ショートしておきます。オーディオアナライザを使用する場合はアンプの出力をアナライザーの入力に入れ、アナライザーの出力をアンプ入力に接続します。SN測定時はアナライザーの発振器出力がゼロになり実質的にアンプを600Ωで短絡した状態で残留ノイズを測定します。ただ残留ノイズ(SN比)測定時には以下の2点に注意する必要があります。 ・測定時のフィルターの有無 ・測定系(電子電圧計)の帯域幅B(周波数特性)。SN比の測定にフィルターをかけることはオーディオに詳しい方ならご存知かと思いますが、実は測定器の帯域幅も大いに関係します。一般にアンプのノイズのスペクトルはハムを除けば(半導体アンプではハムが無いのが当たり前なので)、ノイズ電圧として測定されるのはホワイトノイズ成分です。すなわちすべての周波数で一定の振幅のノイズがランダムに発生していると考えて良いのです。測定系の帯域が広ければ広いほどノイズ成分は大きく測定されます。具体的には抵抗から発生する熱雑音(ホワイトノイズ)は以下の式で表されます。
    Vn=√(4kTBR)
ホワイトノイズは(4KTBR)のルートに比例します。Kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Rは抵抗値、Bが測定系の帯域幅です。アンプで使用している抵抗の値が100倍になればノイズは10倍に、測定している電圧計の帯域が100倍になればノイズは10倍になります。電子電圧計の帯域は通常数MHzオーディオアナライザーの電圧計部帯域も500KHz(VP-7723A)なので、たいして変わらないのですが、問題は意図的に20KHz以上をカットして測定している(表示している)ケースがあることです。その場合はSN比が15-20d位良く見えてしまいます。

残留ノイズの実測値

次に実際にアンプの残留ノイズの測定結果を見てみましょう。
測定に使用したのは弊社のフラットアンプを検査用のケース(プリアンプとほぼ同じ)に収めたものです。測定にはオーディオアナライザーVP7723A(各種フィルターを内蔵している)を使用しています。アンプの入力はショートしています。
測定条件 測定値 コメント
フィルターなし 23.7uV Flat、Unweightedと同じです(B=500KHz)
フィルターA
IHF-A
3.9uV かなり小さくなります
20-20KHz 4.9uV これもかなり小さくなります
(実際には20KHz以上のみカットしています)
当然の事ながら20KHzまでに帯域を制限したものはノイズがかなり小さく測定されています。 次にこれらの測定結果を元にSN比を色々な表現方法で表記してみましょう。
整理番号/SN比 信号レベル
ノイズレベル コメント
@92.5dB 1V 23.7uV フィルターなし、標準的かつ最も悪く見える表示法
A108.2dB 1V 3.9uV IHF-A、これも良く使われる表示です
B106.2dB 1V 4.9uV 20-20KHz,海外製品に良く使用されている表示
(一見フィルターを使っていないかの様に見せる高等テク?)
C118.5dB 20V 23.7uV フィルターなし、最大出力を基準にしたSN表示
D134.2dB 20V 3.9uV IHF-A、最大出力を基準にしたSN。表示最も良い数字になる
E132.2dB 20V 4.9uV 20-20KHz,最大出力を基準にしたSN。最も誤解を招きやすい表示

@からBは出力レベルを1VとしてSN比を算出したもので、この様に出力1−2Vを基準としてSN比を表示するのが一般的でした。ところが最近、特に海外製品、あるいは国内製の一部に最大出力を基準としてSN比を表示している(あるいはそうとしか思えない)例があります。たとえば弊社のフラットアンプの最大出力は20Vrmsですから、単純に1と20Vの比である26dB分良くなることになります(C-E)。

このような表示が使われるようになった理由として以下の2点が考えられます。
・特に高価な価格設定をしているために、スペックを他の製品より良く見せたい。
・LCD表示、デジタル制御を使用して実際のSNが悪くなっているので見劣りしない様に甘い条件を使用している。
@とEの表示では同じアンプでも実に40dBの差が生じてしまいます。こういっ裏技を使えば例えば実力50dBのアンプでも90dBと表示できるのです。また条件の表示の無いSN比はまったく意味が無いのですが、実際のカタログの半分ぐらいは条件が特定できないようです。

最も悪質と思っているのがBもしくはEの表示でカタログなどには「Unweighted/20-20KHz」などと条件が表記されています。周波数特性のあるフィルターを使用していないのでUnweightedという表記は正しいのですが20-20KHzという条件がフィルタリングしていることを意味していますので紛らわしいのです。20-20KHzという条件は可聴帯域を表しているので一見当たり前に見えますが、これまでに述べた様に15dB位稼げるテクニックです。 Unweightedと併記しているところが非常にいやらしいです。不動産広告で言えば「駅から車で5分」のところを「徒歩圏内/駅から5分」と書いていいるようなものです。

終わりに

以上SN 比について解説しました。カタログを見る際にはこういった知識を持ってみると、製品の実力もより正確につかめる様になりますし、メーカーあるいは販売店の姿勢といったものが見えてくると思います。

アンプの使用部品の特性(コンデンサ編)

はじめに

 アンプの音質を左右する要因の一つとして使用するパーツがあげれれます。ここでは使用されるコンデンサの特性についてお話します。

コンデンサのンピーダンス特性について

オーディオアンプに使用するコンデンサーに要求される特性として
・ 高周波特性が良いこと
・ 高調波歪が少ないこと
・いわゆる鳴きが少ないこと
が挙げられるかと思います。ここでは高周波特性について調べた結果をお話します。

測定方法

コンデンサのインピーダンス測定には自社製のインピーダンスアナライザーを使用しました。DDS発振器と2CHのログアンプから構成され発振器の周波数をPCで制御します。ログアンプはACの実効値の対数をとりDCとして出力します。出力されたDC値をDAコンバーターを経てPCに取り込みます。キャパシタンスの測定には発振器出力を既知の抵抗(51Ω)を通じてコンデンサに印加し、抵抗とコンデンサの電圧を比較してインピーダンスを求めます。1KHzから70MHZまでのインピーダンス特性を測定することができます。測定下限は0.1Ωで、1MHZ以上では測定系の自己インダクタンスのために測定下限も上昇します。

電解コンデンサのインピーダンス特性

次の図は小容量の電解コンデンサのインピーダンス特性を測定した結果です。 コンデンサですので周波数に比例してインピーダンスが減少していくのが理想ですが、実際には数十KHzからインピーダンスが下がらなくなります。 汎用の電解コンデンサでは1-2Ω程度、オーディオ用のものでも0.5Ω程度が限界です。最も良い特性を示しているのはOSコンと呼ばれる有機系のコンデンサで、ほぼ理想的な特性を示しています。 ただ残念ながらOSコンは耐圧が低く使用できるところが限られてしまいます。 OSコンの次に良い結果が得られているのがタンタルコンデンサです。オーディオデザインのアンプではこれらのデータを基に使用場所に応じて最適なコンデンサを使用しています。


フィルムコンデンサのインピーダンス特性

このグラフはカップリングコンデンサ(アンプ出力部でDCカットのために挿入されるコンデンサ)に用いられる比較的大容量のフィルム系のコンデンサのインピーダンス特性の測定結果です。電解コンデンサに比較して非常に良好な特性が得られており、ほぼ理想的な特性が得られています。音質も電解コンデンサからフィルム系のコンデンサに変えると音の透明感、解像度が向上するのがはっきりわかります。ただしフィルム系のコンデンサ間での特性差は小さく、またコンデンサを交換してもはっきりとした差は認められませんでした。弊社アンプではカップリングコンデンサを省略することも可能ですので、カップリングコンを通す場合と通さない場合で比較しましたが、カップリングコンによる音質の劣化は認められませんでした。ただ市販のアンプ等にはいまだにカップリング用に電解コンデンサが用いられている事も多いようですので、その場合はわずかですが音質に影響があると思われます。。

小容量コンデンサのインピーダンス特性

こちらはイコライザアンプのRIAA補正に用いられる小容量のコンデンサの特性を比較したものです。測定で限界よりも小さい値が測定されていますが、これはコンデンサが共振して測定系のリアクタンスを打ち消す成分が発生しているためと考えられます。小容量コンデンサは注意が必要です。1000pF程度ですと共振周波数が数十MHzなので完全に帯域外ですが、容量が大きくなると共振周波数が下がる傾向があるので注意が必要です。特にマイラーコンデンサは0.1uFで帯域内のMHz帯まで共振周波数が低くなっており、ハイエンドオーディオ用途には使用しないほうが良いでしょう。

 



アンプの使用部品の特性(抵抗編)

はじめに

 アンプの音質を左右する要因の一つとして使用するパーツがあげれれます。ここでは使用される抵抗の特性についてお話します。

抵抗のンピーダンス特性について

オーディオアンプに使用する抵抗に要求される特性として
・ 周波数依存性がないこと(高周波領域においても)
・ 高調波歪が少ないこと
が挙げられるかと思います。ここでは高周波領域の抵抗値(インピーダンス特性)について調べた結果をお話します。

測定方法

抵抗のインピーダンス測定には自社製のインピーダンスアナライザーを使用しました。DDS発振器と2CHのログアンプから構成され、発振器の周波数をPCで制御します。ログアンプはACの実効値の対数をとりDCとして出力します。出力されたDC値をDAコンバーターを経てPCに取り込みます。キャパシタンスの測定には発振器出力を既知の抵抗(51Ω)を通じて抵抗に印加し、基準抵抗と被測定抵抗の電圧を比較してインピーダンスを求めます。1KHzから70MHZまでのインピーダンス特性を測定することができます。測定下限は0.1Ωで、1MHZ以上では測定系の自己インダクタンスのために測定下限も上昇します。また測定上限は約1KΩで高域ではさらに低下します。これは測定系の入力インピーダンスが約1KΩと低いためです。さらに注意することは測定の際基準抵抗(金属被膜抵抗)を基準にしたインピーダンス特性ですので、あくまで相対値として考えてください。 厳密にはネットワークアナライザーなどを使用してインピーダンス特性を測定すべきです。(本結果と異なる測定データをお持ちの方はご教授いただけると助かります)

抵抗のインピーダンス特性

次の図は各種抵抗のインピーダンス特性を測定した結果です。 抵抗ですので周波数に依存せずインピーダンスが一定である事が理想です。抵抗の場合は巻き線系の抵抗(ホーロー、セメント)を除いてほとんど理想特性に近く、高周波領域においても問題なく使用できます。10MHz以上で金属箔抵抗がフラットなのに対し他の抵抗では若干抵抗値が下がっていますが、有意差かどうかは微妙なところです。巻き線抵抗は案の定、高周波領域でインピーダンスが上昇していますが、1MHz位まではインピーダンスの上昇がないので、峡帯域設計のアンプには問題なく使用できるでしょう(使用する必然性はないのですが)。サーミスタもまったく平坦で温度補償素子ではありますが、その優秀さは抵抗と同格です。恥ずかしながら、良く売られている角型のセメント抵抗が巻き線型であることをこの測定をするまで知りませんでした。(セメント抵抗の中には金属箔抵抗のものもあるようですが)。


低抵抗のインピーダンス特性

さらにもう一枚グラフをお見せします。このグラフはパワーアンプの出力段のエミッタ抵抗等に用いられる低抵抗のインピーダンス特性を測定したものです。一つは汎用的に用いられる角型セメント抵抗、もう一つは金属箔タイプの抵抗です。アンプの教科書にはセメント抵抗は高周波特性が10倍くらい悪いので使用しない様にとの記述がありましたが、実際にはそこまでは違わないようです。セメント抵抗(巻き線抵抗)のわりに高周波特性が他のタイプとさほど変わらないのは、抵抗値が小さいために巻き数が少ないためと思われます。

 



スピーカーシステムの周波数特性の測定方法

はじめに

 スピーカーシステムの周波数特性はオーディオシステムの中でも最も音質に大きな影響を及ぼす大切な特性と考えられます。 ここではスピーカーシステムの実際の試聴状況における周波数特性の測定方法と実測結果について紹介したいと思います。

スピーカーシステムの周波数特性の測定方法

測定方法には大まかに分けて次の2つの方法があります。
・FFTによる周波数特性測定
・サイン波による測定
一つ目の方法はホワイトノイズをSPから出力し高速フーリエ変換(FFT)することにより周波数測定を測定するものです。この手法はFFTのフリーの解析ソフトもありますので比較的手軽に実施できます。メリットはほぼリアルタイムで特性が把握できることです。欠点としてはノイズ、あるいは統計誤差により周波数特性上のピーク、ディップがあることと特に低域の精度が出にくいことです。測定中のレベル変動を低域成分としてカウントしてしまい、低域の特性が実際よりも大きく見えてしまったり、再現性に乏しかったりすることがあります。
      (ホワイトノイズ+FFTで解析求めたスピーカーシステムの周波数特性)

このグラフは実際にスピーカーにホワイトノイズを入力し、応答波形をFFT解析して周波数特性を求めた結果です。
原理的に分解能が一定なので高域程ノイズが目立つようになります。全体的にノイズが目立ちます。ノイズは平均化回数を多くすると改善されるはずなのですが、そうすると本来あったピーク・ディップも平均化されなめらかな特性になってしまう様です。もちろんプログラム・ソフト上で工夫すればこれらの問題はある程度改善されと思いますが、そこまでできるもので安価なものは無いようです。
2番目の方法はサイン波を直接入力して測定するもので、無響室ではよく用いられますが、実際の試聴環境下で測定される例は少ないようです。しかし実際にkの方法で測定してみると、細かな周波数特性上のピーク・ディップがはっきり把握でき、FFTよりも高い精度で信頼できるデータが得られやすいのです。次に実際にサイン波による測定方法を2例紹介します。

サイン波のスイープによる自動測定(その1)


まず最初にパソコン(とマイク)だけで周波数特性をはかる方法を紹介します。RightMark社というところがRMAAというDAコンバーター用の自動測定ソフトを提供しています。
http://audio.rightmark.org/products/rmaa.shtml
フリーソフトですがかなりの機能がで使用できるので試してみました。もともとDAコンバーターのテスト用ですので
SPの測定には向かないのですが、何とか特性を計る事ができました。ただし測定時のレベル設定に非常に敏感でレベル設定は何度もやり直しました。またあまりに周波数特性が悪い場合は測定結果がおかしいと思われることも多々あり、決してお薦めはできませんが、スイープによる測定方法の可能性を見るものとして紹介します。


SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m

この特性は正面2mにおける左右の周波数特性を測定した結果です。SPはB&W805Sです。測定時間は一つあたり数秒で終了し、この様な見やすいグラフにしてくれるので大変便利ですが、実際には先に述べたように何度も測定しなおしています。また全体的に細かなピークディップが少なく測定されています。SP向けにもっと細かくゆっくり測定できると理想的なのですが・・・。特性は全体的にフラットで非常にバランスが取れていることがわかります。16cmのSPで50Hzまで低域が延びているのは立派です。


サイン波のスイープによる自動測定(その2)

 次にもう少々本格的なスピーカーの周波数特性の測定方法を紹介します。使用するのはオーディオアナライザーです。 オーディオアナライザーは低周波発振器、AC電圧計、歪率計が内蔵されたオーデョイアンプ用の測定器です。発振器とAC電圧計がありますので、これを用いて自動測定のシステムを組んでみました。 使用したオーディオアナライザーはPanasonicのVP-7723Aというものです。 この測定器にはGPIBという汎用的な通信制御機能がありますので、GPIBを利用してこの測定器をパソコンから自動制御するシステム/プログラムを構築しました。

サイン波の純音をスポット出力し、音圧を測定した後、周波数をずらして測定を続けます。周波数の可変ステップは5%とし20Hz-20KHZまでを143点を5分で測定します。以下に測定結果を示します。
 5%きざみで測定すると連続的にスイープしたかのような周波数特性が得られていることがわかります。先のRMAAを用いた測定結果と比べると次のことがわかります。
   ・RMAAと全体の周波数特性の傾向は似ている
   ・ただしRMAAでは狭いディップが広がってかつ浅く、平均化されて測定されてしまっている
      (4KHzの谷が広がり、150Hzの谷はかなり浅くなっている)
RMAAによる測定も第一近似としては良いのですが、やはり実際の周波数特性を見てしまうと役不足であることがわかります。 RMAAの測定は全帯域を数秒でスイープすることに無理があり、SP用に数十秒かけて測定できれば同等精度で測定できると思います。
 オーディオアナライザーとGPIB制御による測定の問題点はヤはり測定装置が大掛かりになることと、スポット測定のため、比較的時間がかかる(5分)ことです。 5分間ブーとかピーという音を出すので近所迷惑でもあります(ある程度レベルを上げないと騒音の影響を受けます)。

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)


(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)

スピーカーシステムの周波数特性(その2)

はじめに

 前節でスピーカーシステムの周波数特性が得られるようになりましたので、SPシステムの置き方などを探ってみたいと思います。


スピーカーの設置高さ依存性

 さて、ここでも一度得られた周波数特性を見てみます、全体的にフラットでバランスの良い特性が得られているといえます。

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)


(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)

ただ気になるのは150Hz近辺に大きな谷があることで、全体的に低音の量感が物足りないことを裏付ける結果となっています。 いろいろ調べましたが、この谷は床からの反射が大きく影響しています。そこで床からの反射の影響を低減するために床に直においてみました(下図)。

                    (床直置きでの周波数特性、RCH)

                    (床直置きでの周波数特性、LCH)

150Hz付近にあった谷は消え、かつ100Hz以下のレベルも若干上がり低音域のバランスも改善されました。 全体的なバランスは床直おきの方が優れていますが、ただ逆に中興音域での暴れが目立つようになってしまいました。床に置くと床からの反射波との距離差が20-30cmになりますので、 干渉の影響で中高音が乱れる結果になり、根本的な解決策にはならないことがわかります



スピーカーの後壁面からの距離

次にSPの後ろ壁面からの距離を変えた結果について見てみましょう。






上の図面はスピーカーの後壁面からの距離Dbを変えて周波数特性を測定したものです。45cmの台に乗せた状態で測定しています。DBが大きいほど壁から遠いことを意味しています。後壁面から距離に関しては低音域で大きな違いがでました。距離を離すほど120Hz以下の全体的なレベル(線で示しているあたり)が下がってしまっているのがわかります。一般にSPのセッテイングは壁面から離す方が良いと言われたりしますが、必ずしもそうでないことがわかります。周波数特性から言うと、50cmか35cmが好ましいといえるのです。ちなみに35cmというのはSPを後ろの壁にほぼ付けた状態になります。理想を言えばSPを壁に埋め込んだ形で無限大バッフルの様な感じにした方が周波数特性の暴れもなくなっていいかもしれません。またDb=80cmのグラフは中低音域(100-1000KHz)の特性にも鋭いピークが生じていることがわかります。特に小さいSPシステムの場合はあまり後壁面から離さないで、低音域のバランスを取ったほうが好ましい結果になるといえます。

スピーカー試聴距離依存性

次にSPと試聴位置との距離(Dl)の依存性について調べた特性を下図に示します。試聴距離Dl依存性は試聴でも最も明確に認識できる周波数特性の変化です。 距離2mではほぼフラットで低域がかまぼこ型に低下しているのに対して3mになるとやや低域が持ち上がります。4mの距離になると100Hz以下が強烈に持ち上がってきます。 聴感上全体のバランスが整っている様に聞こえるのは3m付近です。2mですと低音不足に聞こえます。 一般に中高音は直進する性質がありますので、間接音が低音域に比べて少なくなるため、試聴位置でのレベルが下がっていて自然なバランスになるのだと思います。 いずれにしろ試聴距離依存性が非常に大きく周波数特性を左右していますので、この影響を平均化する工夫をしないといけないかもしれません。

音質の評価・表現基準

音質の差や良否を文章で表現して伝えるのは大変なことですし、多くの場合正確には伝わっていないのではないでしょうか。 また私自身が感じているオーディオ製品、部品間の音質差というのはちまたで言われているのと異なる部分が多々あります。 私の考えている音質の良否に関して少しでも理解していただく手助けになればという観点から音質差の表現基準なるものを図式化してみました。
詳細はこちらの図面をご覧下さい。

音質差評価基準の図を見る

図中青が世間一般の方と同じと思われる部分、黄色が少し異なるかもしれない部分、ピンクがオーディオ業界で良く耳にする話と異なると思われる部分です。

いくつか揚げると
・抵抗コンデンサ等の部品の音質差は同類であれば意外と小さい
  電解コンデンサとフィルムコンデンサでは違います。ですがフィルムコン間の音質差は小さいかわからないくらいです
・回路技術による音質差は非常に大きい(当然ですが)
・アンプ基板の位相補正の最適化は非常に重要パーツの差よりもはるかに効きます。逆に位相補正をその都度行わないパーツ間の試聴比較は意味をなしません(パーツを変更すると最適な位相補正値が変わるので)。
などです。

スピーカーセレクター


スピカーセレクターの外観

プリアンプ

プリアンプの外観

パッシブアプリンプ


パッシブプリアンプの外観
オーディオデザインのロゴマーク

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